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縦断データの分析I ―変化についてのマルチレベルモデリング―
菅原 ますみ(監訳)
内容紹介
\\"Applied Longitudinal Data Analysis: Modeling Change and Event Occurrence.(Oxford University Press, 2003)前半部の翻訳。個人の成長などといった変化をとらえるために,同一対象を継続的に調査したデータの分析手法を解説。\\"。
編集部から
・Applied Longitudinal Data Analysis: Modeling Change and Event Occurrence. (Oxford University Press, 2003)の翻訳.原書を2分冊して刊行.
・1回の調査で得られるものを横断データに対し,個人の成長などの変化をとらえるために,同一対象への継続的な調査で得られるものを「縦断データ」といいます.ヒトを対象とする調査研究で,その変化を実証的にとらえるときに必須とされるものです.
・心理学や教育学、社会学、医学、保健学など、個人の心身の発達変化や変容を対象とする研究領域では、同一サンプルを追跡する縦断的研究の実施が欠かせません.現在までにも多くの縦断調査が実施され,縦断データが集められてきました.本書は,この縦断データの統計解析の方法を,読者が自力で作業ができるように丁寧に,また実在データをもとに具体的に解説.
・縦断データの分析にあたって必要なのは,“変化のパターン”や“変化のパターンを予測する変数”を定量的に切り出す作業ですが,実は意外に困難な作業です。本書はこうした作業にとって有力な統計手法となるマルチレベルモデリングを紹介します.
目次
1章 時間による変化を検討する際の枠組み
1.1 時間による変化を研究すべきとき
1.1.1 思春期における反社会的行動の変化
1.1.2 読む能力の発達的変化の個人差
1.1.3 STAPPの有効性
1.2 変化に関する2つの質問の違い
1.3 変化に関する研究の3つの重要な特徴
1.3.1 複数回のデータ収集
1.3.2 時間の適切な測定基準
1.3.3 時間の経過とともに組織的に変化する結果変数
2章 時間についての縦断データの探索
2.1 縦断データセットをつくる
2.1.1 個人レベルデータセット
2.1.2 個人―時点データセット
2.2 個人の時間による変化の記述的分析
2.2.1 経験的成長プロット
2.2.2 個人の経験的成長記録の要約に曲線を使う
2.3 変化の個人差を探る
2.3.1 全員分の平滑化曲線を検討する
2.3.2 モデルをあてはめた結果を変化に関する疑問の構築に使う
2.3.3 時不変の予測変数と変化の関係を探る
2.4 最小二乗法によって推定された変化率の精度と信頼性を改善する:研究計画への教訓
3章 変化についてのマルチレベルモデルの紹介
3.1 変化についてのマルチレベルモデルの目的は何か
3.2 個人の変化についてのレベル1サブモデル
3.2.1 レベル1サブモデルの構造的な部分
3.2.2 レベル1サブモデルの確率的部分
3.2.3 レベル1サブモデルの,2章におけるOLS探索方法への関連づけ
3.3 変化の個人差についてのレベル2サブモデル
3.3.1 レベル2サブモデルの構造的な部分
3.3.2 レベル2サブモデルの確率的な部分
3.4 変化についてのマルチレベルモデルをデータにあてはめる
3.4.1 最尤推定法の利点
3.4.2 最尤推定法を利用してマルチレベルモデルをあてはめる
3.5 推定された固定効果の検討
3.5.1 推定された固定効果の解釈
3.5.2 固定効果に関する一母数検定
3.6 推定された分散成分の検討
3.6.1 推定された分散成分の解釈
3.6.2 分散成分に関する一母数検定
4章 変化についてのマルチレベルモデルでのデータ分析
4.1 例:青年期のアルコール摂取量の変化
4.2 変化のためのマルチレベルモデルの合成的な定式化
4.2.1 合成モデルの構造的な部分
4.2.2 合成モデルの確率的な部分
4.3 推定法(再考)
4.3.1 一般化最小二乗推定
4.3.2 完全最尤推定と制限つき最尤推定
4.3.3 推定についての実用上のアドバイス
4.4 最初のステップ:変化についての2つの無条件マルチレベルモデルのあてはめ
4.4.1 無条件平均モデル
4.4.2 無条件成長モデル
4.4.3 結果変数の説明された分散を定量化する
4.5 モデル構築のための実践的データ分析
4.5.1 統計モデルの分類
4.5.2 あてはめたモデルの解釈
4.5.3 典型的な変化の軌跡を図示する
4.5.4 解釈しやすくするために,予測変数を中心化する
4.6 乖離度統計量を用いたモデルの比較
4.6.1 乖離度統計量
4.6.2 いつ,どのようにして乖離度統計量を比べるべきか?
4.6.3 乖離度に基づく仮説検定の実行手続き
4.6.4 AICとBIC:情報量規準を用いたネストしていないモデルの比較
4.7 固定効果に関する複合仮説のワルド統計量を用いた検定
4.8 モデルの仮定の許容度の評価
4.8.1 関数形の検証
4.8.2 正規性の検証
4.8.3 等分散性の検証
4.9 個人の成長パラメータのモデルに基づく(経験ベイズ)推定値
5章 時間的な変数TIMEをより柔軟に扱う
5.1 間隔が一定ではない測定時点
5.1.1 測定の間隔にばらつきのあるデータセットの構造
5.1.2 マルチレベルモデルを仮定して,測定の間隔にばらつきのあるデータにあてはめる
5.2 測定時点の数が異なる場合
5.2.1 個人ごとに測定時点の数が異なるデータセットを分析する
5.2.2 非釣り合い型のデータセットを分析する時に起こるかもしれない実際上の問題
5.2.3 欠測のさまざまなタイプを区別する
5.3 時変の予測変数
5.3.1 時変の予測変数の主効果を含める
5.3.2 時変の予測変数の効果が時間とともに変化することを許容する
5.3.3 時変の予測変数を再中心化する
5.3.4 重要な注意:逆方向因果の問題
5.4 TIMEの効果の再中心化
6章 非連続あるいは非線形の変化のモデリング
6.1 非連続な個人の変化
6.1.1 変化についての非連続レベル1モデルの選択肢
6.1.2 非連続なモデルをいくつかの選択肢から選ぶ
6.1.3 非連続な成長モデルのさらなる拡張
6.2 個人の非線形の変化を変換によってモデリングする
6.2.1 変換のはしごとでっぱりの法則
6.3 時間の多項式関数を用いて個人の変化を表す
6.3.1 多項式で表される個人の変化の軌跡の形状
6.3.2 適切な多項式を用いたレベル1の変化の軌跡の選択
6.3.3 多項式を利用したレベル1モデルの高次項に関する検定
6.4 真に非線形な軌跡
6.4.1 真に非線形なモデルとは何を意味するのか?
6.4.2 個人のロジスティック成長曲線
6.4.3 真に非線形な変化の軌跡に関して調べてみる
6.4.4 実質科学的理論から個人の成長の数学的表現へ
7章 マルチレベルモデルの誤差共分散構造を検討する
7.1 変化についてのマルチレベルモデルの「標準的な」定式化
7.2 誤差共分散行列の仮定を理解するために合成モデルを使う
7.2.1 複合残差の分散
7.2.2 複合残差の共分散
7.2.3 複合残差の自己相関
7.3 誤差共分散構造の別の仮定の仕方
7.3.1 非構造的誤差共分散行列
7.3.2 複合対称的誤差共分散行列
7.3.3 異分散複合対称的誤差共分散行列
7.3.4 自己回帰的誤差共分散行列
7.3.5 異分散自己回帰的誤差共分散行列
7.3.6 トープリッツ誤差共分散行列
7.3.7 「正しい」誤差共分散構造を選ぶことは本当に重要なのか?
8章 共分散構造分析を用いて変化のモデリングを行う
8.1 一般的な共分散構造モデル
8.1.1 X測定モデル
8.1.2 Y測定モデル
8.1.3 構造モデル
8.1.4 CSAモデルをデータにあてはめる
8.2 潜在成長モデリングの基礎
8.2.1 レベル1モデルのY測定モデルへの移植
8.2.2 レベル2モデルの構造モデルへの移植
8.3 変数横断的な変化の分析
8.3.1 X,Y測定モデルの両方で個々人の変化をモデリングする
8.3.2 構造モデルで変化の軌跡間の関係をモデリングする
8.4 潜在成長モデリングの拡張
文献一覧
付録:縦断データ解析に役立つツールの紹介
執筆者紹介
○原題・原著者
Judith D. Singer
John B. Willett
監訳者・訳者(Ⅰ 刊行時)
監訳
菅原ますみ(お茶大・教授)
訳者
松本聡子 お茶の水女子大学
松浦素子 お茶の水女子大学
尾崎幸謙 統計数理研究所
室橋弘人 東京大学 高齢社会総合研究機構
髙橋雄介 京都大学 高等教育研究開発推進センター
岡田謙介 専修大学
山形伸二 大学入試センター 入学者選抜研究機構