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内容紹介
定評のCambridge Univ. Pressの“Equilibrium and Non-equilibrium Statistical Thermodynamics”の邦訳。統計物理学の全分野(カオス,複雑系を除く)をカバーし,数理的にわかりやすく論理的に解説。〔内容〕熱統計/統計的エントロピーとボルツマン分布/カノニカル集団とグランドカノニカル集団:応用例/臨界現象/量子統計/不可逆過程:巨視的理論/数値シミュレーション/不可逆過程:運動論/非平衡統計力学のトピックス/付録/訳者補章(相転移の統計力学と数理)。
編集部から
本書は,ケンブリッジ大学出版局から2004年に刊行された‘Equilibrium and Non-equilibrium Statistical Thermodynamics’の翻訳である。統計物理学は,物理以外でも今や化学,生物物理学,経済物理学の分野まで応用範囲はきわめて広い。また最近では,量子群などの新しい数学の発展にも大きな影響を与えている。このような状況下,必要に応じて手っ取り早く理解し応用できる内容に仕上がっている。原著者は統計力学を専門とする研究者ではなく,素粒子論などのほかの理論物理学の分野で統計力学を応用する立場の人たちであるが,物理学全般にわたり造詣が深く,統計物理学だけでも100冊以上の本を参考にしてまとめた力作である。
本書の特徴は次のようになっている。
・統計物理学の全分野(カオス,複雑系は除く)をカバーしており,全体としてのバランスがとれている。
・説明の仕方は数理的にわかりやすく論理的に筋が通っている。基本的な事項に関してはいくとおりもの説明を与えるなどの工夫をして丁寧な解説がなされている。
・1項目ごとに節が適切に区分けされており,短く簡潔に解説されたまさにハンドブック的構成になっている。
・内容が豊富であり,それを1冊でカバーする工夫として,章ごとに基本課題と研究課題が多数掲載されており,結果のみまとめられている。・素粒子や宇宙物理に関する話題まで含まれていてきわめて対象が広く現代的である。
・翻訳段階では,必要に応じて訳注を付け加え,さらに補章「相転移の統計力学と数理」(鈴木先生執筆)をオリジナルで付した。
基本的なテーマでありながら類書が少ないことを考えると,本書がこれからの統計物理学の発展に寄与することを確信するとともに期待している。(星)
目次
1. 熱統計
1.1 熱力学的平衡
1.2 エントロピー最大の要請
1.3 熱力学的ポテンシャル
1.4 安定性条件
1.5 熱力学第三法則
1.6 基本課題
1.7 研究課題
1.8 さらに進んで学習するために
2. 統計的エントロピーとボルツマン分布
2.1 量子論的記述
2.2 古典的記述
2.3 統計的エントロピー
2.4 ボルツマン分布
2.5 再び熱力学について
2.6 不可逆性とエントロピー増加
2.7 基本課題
2.8 さらに進んで学習するために
3. カノニカル集団とグランドカノニカル集団:応用例
3.1 カノニカル集団の簡単な例
3.2 古典統計力学
3.3 量子振動子と量子回転子
3.4 理想気体から液体へ
3.5 化学ポテンシャル
3.6 グランドカノニカル集団
3.7 基本課題
3.8 研究課題
3.9 さらに進んで学習するために
4. 臨界現象
4.1 イジング模型,再び
4.2 平均場理論
4.3 ランダウ理論
4.4 繰り込み群の一般論
4.5 繰り込み群の例
4.6 基本課題
4.7 さらに進んで学習するために
5. 量子統計
5.1 ボース-アインシュタイン分布とフェルミ-ディラック分布
5.2 理想フェルミ気体
5.3 黒体輻射
5.4 デバイ模型
5.5 粒子数が固定された理想ボース気体
5.6 基本課題
5.7 研究課題
5.8 さらに進んで学習するために
6. 不可逆過程:巨視的理論
6.1 流束,アフィニティ,輸送係数
6.2 例
6.3 単純流体の流体力学
6.4 基本課題
6.5 研究課題
6.6 さらに進んで学習するために
7. 数値シミュレーション
7.1 マルコフ鎖,収束性および詳細つり合い
7.2 古典系のモンテカルロ
7.3 臨界緩和とクラスターアルゴリズム
7.4 量子モンテカルロ:ボゾン
7.5 量子モンテカルロ:フェルミオン
7.6 有限サイズスケーリング
7.7 乱数発生法
7.8 基本課題
7.9 研究課題
7.10 さらに進んで学習するために
8. 不可逆過程:運動論
8.1 概論と輸送係数の近似計算
8.2 ボルツマン-ローレンツ模型
8.3 ボルツマン方程式
8.4 ボルツマン方程式からの輸送係数の計算
8.5 基本課題
8.6 研究課題
8.7 さらに進んで学習するために
9. 非平衡統計力学のトピックス
9.1 線形応答:古典論
9.2 線形応答:量子理論
9.3 射影法と記憶効果
9.4 ランジュバン方程式
9.5 フォッカー-プランク方程式
9.6 数値積分
9.7 基本課題
9.8 研究課題
9.9 さらに進んで学習するために
A. 付録
A.1 ルジャンドル変換
A.2 ラグランジュ未定乗数
A.3 トレース,テンソル積
A.4 対称性
A.5 役に立つ積分
A.6 汎関数微分
A.7 単位と物理定数
B. 訳者補章:相転移の統計力学と数理
B.1 相転移の一般的特徴
B.2 拡張された平均場近似列とコヒーレント異常法(CAM)
B.3 厳密解の方法と手順の分離
B.4 トポロジカル相互作用法(TIM)
B.5 局所的摂動と臨界現象
B.6 相関等式と相関関数の漸近形
B.7 臨界現象の共形場理論とビラソロ代数
B.8 有限サイズスケーリング則と非平衡緩和法
B.9 今後の問題
文 献
訳者追加文献
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