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RNAの科学 ―時代を拓く生体分子―
金井 昭夫(編)
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内容紹介
RNAは,DNAやタンパク質と並んで生命現象を司る基本的な生体分子である。近年,従来知られていた以上に生体内で重要な役割を数多く担っていることが明らかにされつつある。さらに創薬やワクチンなどへの応用も注目を集めている。RNAの基本的なはたらきから最近の知見まで,全体像を俯瞰できる一冊。オールカラー。
編集部から
・RNAは,DNAやタンパク質と並んで生命現象を司る基本的な生体分子である。
・近年,従来知られていた以上に生体内で重要な役割を数多く担っていることが明らかにされつつある。さらに創薬やワクチンなどへの応用も注目を集めている。
・RNAの基本的なはたらきから最近の知見まで,全体像を俯瞰できる一冊。オールカラー。
目次
I RNA の基礎生物学
INTRODUCTION 〔金井昭夫〕
1章 転写 〔甲斐田大輔〕
1.1 RNA ポリメラーゼ
1.1.1 原核生物のRNA ポリメラーゼ
1.1.2 真核生物のRNA ポリメラーゼ
1.2 プロモーターと転写開始
1.2.1 原核生物のプロモーター
1.2.2 RNA ポリメラーゼI(Pol I)によるプロモーターの認識と転写開始
1.2.3 RNA ポリメラーゼII(Pol II)によるプロモーターの認識と転写開始
1.2.4 エンハンサーによる転写活性化
1.2.5 RNA ポリメラーゼIII(Pol III)によるプロモーターの認識と転写開始
1.3 転写伸長
1.4 転写終結
1.5 転写のエピジェネティックな制御
1.6 液-液相分離による転写制御
2章 mRNA スプライシング 〔片岡直行〕
2.1 mRNA スプライシングとは
2.2 恒常的スプライシングと選択的スプライシング
2.3 スプライシングに関わる基本因子
2.4 スプライシング制御因子
2.4.1 SR タンパク質
2.4.2 hnRNP
2.4.3 組織特異的なスプライシング制御因子
2.5 スプライシングと細胞内諸過程との連携
2.6 スプライシング異常による疾患─ RNA 病
2.7 バックスプライシングとcircRNA
3章 tRNA,リボソームとrRNA 〔吉久 徹〕
3.1 tRNA
3.1.1 tRNA の構造
3.1.2 tRNA の機能─デコーディング
3.1.3 tRNA の機能─ペプチド転移反応
3.1.4 tRNA の一生
3.2 リボソームとrRNA
3.2.1 翻訳の反応場であるリボソーム
3.2.2 翻訳反応のコアとなるデコーディングセンター(DC)とペプチジルトランスフェラーゼセンター(PTC)
3.2.3 rRNA
3.2.4 rRNA の成熟化
4章 tRNA とrRNA の修飾 〔堀 弘幸〕
4.1 修飾ヌクレオシドの種類と構造
4.2 修飾ヌクレオシドのtRNA やrRNA での位置
4.2.1 tRNA の修飾ヌクレオシドのポジション
4.2.2 rRNA の修飾ヌクレオシドのポジション
4.3 tRNA およびrRNA 中の修飾ヌクレオシドの役割
4.4 生命はtRNA とrRNA を修飾するために多数の酵素を必要とする
4.5 tRNA 修飾やrRNA 修飾と高次生命現象
4.5.1 tRNA 修飾ネットワーク
4.5.2 rRNA の修飾ヌクレオシドと抗生物質耐性・感受性
4.5.3 修飾ヌクレオシドと感染・免疫
4.5.4 miRNA として機能するtRNA 断片とtRNA 修飾
4.5.5 tRNA 修飾とヒト遺伝病・発がん
4.6 RNA 修飾は,今なお,進化し続けている
5章 真核生物の翻訳制御機構 〔伊藤拓宏〕
5.1 tRNA のアミノアシル化
5.2 翻訳開始
5.2.1 ステップ1:eIF4F 複合体によるmRNA の認識機構
5.2.2 ステップ2:eIF2 とeIF2B による翻訳制御─統合的ストレス応答
5.2.3 ステップ3:リボソーム40S 小サブユニット・翻訳開始因子・mRNA 複合体による開始コドンの探索
5.2.4 ステップ4:リボソーム60S 大サブユニットの会合
5.3 配列内リボソーム進入部位(IRES)による非標準的な翻訳開始
5.4 翻訳伸長
5.5 翻訳終結─ペプチドの解離とリボソームリサイクル
5.6 翻訳伸長と終結におけるeIF5A の機能
6章 遺伝子発現の正確性を保証する品質管理機構 〔稲田利文〕
6.1 異常mRNA を認識し排除するmRNA 品質管理機構
6.1.1 mRNA 品質管理機構の概要
6.1.2 ナンセンス変異依存mRNA 分解機構(NMD)
6.1.3 翻訳停滞依存mRNA 分解機構(NGD)
6.1.4 ノンストップmRNA 分解機構(NSD)
6.1.5 原核生物でのノンストップmRNA 品質管理
6.2 翻訳品質管理の分子機構と生理意義
6.2.1 リボソーム品質管理機構(RQC)による翻訳異常の解消と異常タンパク質の分解
6.2.2 mRNA 非依存のペプチド鎖形成機構による品質管理
6.2.3 衝突リボソームとストレス応答
6.3 機能欠損リボソームの品質管理機構NRD とリボファジー
II 機能性RNA
7章 miRNA 経路の全体像 〔泊 幸秀・小林穂高〕
7.1 miRNA の発見
7.2 miRNA はどのように生合成されるのか
7.3 miRNA のAGO への取り込み─ RISC の形成
7.4 AGO の品質管理
7.5 RISC による標的mRNA の認識
7.6 RISC による遺伝子発現の抑制─翻訳の抑制とmRNA の分解
7.7 miRNA とsiRNA
8章 miRNA と翻訳因子の制御 〔藤原俊伸・友廣拓生〕
8.1 真核生物mRNA の翻訳開始段階とその制御
8.1.1 真核生物のmRNA の翻訳と分解
8.1.2 翻訳開始複合体の制御による部位特異的なタンパク質合成
8.2 miRISC による標的mRNA の翻訳阻害と分解
8.2.1 miRISC による翻訳阻害
8.2.2 miRISC による脱アデニル化
8.2.3 miRISC による脱キャップ反応
8.3 miRISC とRNA 結合タンパク質による時空間的な遺伝子発現制御
8.3.1 RNA 結合タンパク質によるmiRISC の機能の促進
8.3.2 RNA 結合タンパク質によるmiRISC の機能の阻害
9章 piRNA と生殖 〔岩崎由香〕
9.1 piRNA とPIWI タンパク質
9.2 piRNA クラスターの転写
9.3 piRNA の生合成
9.4 piRNA によるトランスポゾンの抑制を介した生殖細胞ゲノムの防御
9.5 トランスポゾン以外の遺伝子を抑制するpiRNA
10章 lncRNA による個体レベルでの機能制御 〔中川真一〕
10.1 エピジェネティクスとゲノム刷り込み
10.2 染色体レベルでの遺伝子量補正
10.3 エピゲノム制御lncRNA 群の遺伝学的な解析
10.4 世代を超えて伝わる遺伝情報とRNA
10.5 その他細胞質に存在する機能性RNA
11章 lncRNA と細胞内相分離 〔廣瀬哲郎〕
11.1 lncRNA の作用様式
11.1.1 lncRNA の作動装置
11.1.2 lncRNA の代表的な作動様式
11.2 細胞内相分離を誘導するRNA
11.2.1 相分離による細胞内構造構築
11.2.2 細胞内相分離を誘導するアーキテクチュラルRNA(arcRNA)
11.2.3 arcRNA による細胞内相分離誘導機構
11.3 非膜オルガネラでのlncRNA による制御機能
11.3.1 反応るつぼ機能
11.3.2 スポンジ機能
11.3.3 クロマチンのハブ機能
11.3.4 疾患との関わり
12章 細菌のsRNA 〔森田鉄兵〕
12.1 細菌におけるsRNA の発見
12.2 細菌sRNA の基本構造
12.3 sRNA による標的mRNA の制御
12.4 Hfq は塩基対形成を促進させる
12.5 sRNA の生合成経路と機能調節
12.6 sRNA と細菌の生理
12.6.1 グルコース代謝を司るsRNA
12.6.2 病原性を司るsRNA
12.7 遺伝子発現過程で機能するRNA およびRNA 結合タンパク質
III RNA 分野の新技術
INTRODUCTION 〔金井昭夫〕
13章 CRISPR の構造と機能 〔石野良純〕
13.1 CRISPR の発見
13.2 CRISPR 配列の普遍性
13.3 cas 遺伝子の発見とその機能
13.4 CRISPR/Cas は獲得免疫機能を担う
13.5 CRISPR/Cas の作用機構
13.6 CRISPR/Cas システムの多様性
13.7 CRISPR/Cas の応用
13.8 CRISPR/Cas の多様な作用機序とその利用
14章 RNA 分野の新技術─ miRNA やsiRNA を用いた創薬研究〔浅野吉政・程久美子〕
14.1 miRNA 創薬の基本概念
14.2 miRNA 阻害療法
14.2.1 anti-miR/AntagomiR 療法
14.2.2 miRNA スポンジ療法
14.2.3 tough decoy RNA( TuD RNA/S-TuD RNA)を用いたmiRNA 阻害
14.2.4 天然化合物を用いたmiRNA 阻害
14.3 miRNA mimic を用いたmiRNA 補充療法
14.4 miRNA 創薬の今後の課題
14.5 siRNA 創薬の基本概念
14.6 siRNA 医薬品の開発
14.7 siRNA の設計法と応用
14.8 siRNA の化学修飾と今後
15章 mRNA 創薬─ mRNA を薬として用いる 〔位髙啓史〕
15.1 mRNA 創薬の歴史
15.2 mRNA 創薬の技術的ポイント
15.2.1 mRNA分子設計・製造
15.2.2 薬物送達システム(DDS)
15.2.3 mRNA を用いたワクチン・疾患治療
16章 リボザイムとその応用 〔井川善也〕
16.1 リボザイムの基本概念とその意義
16.2 リボザイム研究の歴史
16.3 リボザイムの種類
16.3.1 小型リボザイム
16.3.2 大型リボザイム
16.3.3 人工リボザイム
16.4 核酸医薬としてのリボザイム
16.4.1 小型リボザイムの応用例
16.4.2 大型リボザイムの応用例
16.4.3 リボザイム医薬の課題と展望
17章 RNA の合成生物学 〔齊藤博英・山地紀香〕
17.1 RNA スイッチ
17.1.1 miRNA とは
17.1.2 miRNA 応答OFF スイッチの構造と原理
17.1.3 miRNA 応答ON スイッチの開発
17.1.4 miRNA スイッチの応用─細胞種特異的なゲノム編集
17.1.5 miRNA スイッチの応用─細胞の選別
17.2 リプログラミング
17.2.1 iPS 細胞とリプログラミング
17.2.2 mRNA を基盤としたリプログラミング
17.2.3 mRNA 医療応用の課題と挑戦
IV RNA と進化
INTRODUCTION 〔金井昭夫〕
18章 RNA ワールド仮説と生命の起源 〔市橋伯一・水内 良〕
18.1 RNA ワールド仮説の誕生とその背景
18.1.1 RNA ワールドとは
18.1.2 原始地球におけるRNA ワールドの始まり
18.2 RNA の自己複製系
18.2.1 リガーゼ・リコンビネーションリボザイムに基づく自己複製RNA
18.2.2 ポリメラーゼリボザイムに基づく自己複製RNAの構築に向けて
18.3 RNA ワールドから現存生命へ
18.3.1 RNA ワールドにおける進化
18.3.2 RNA-タンパク質ワールドへ
18.3.3 DNA-RNA-タンパク質ワールドへ
18.4 RNA ワールド仮説の問題点
19章 rRNA の進化と進化工学 〔宮崎健太郎〕
19.1 翻訳システムの誕生と進化
19.2 リボソームの進化
19.3 微生物の系統分類の指標としての16S rRNA
19.4 16S rRNA 遺伝子の水平伝播実験
19.4.1 環境ゲノムからの16S rRNA 遺伝子のクローニング
19.4.2 機能スクリーニング系
19.4.3 大腸菌内で活性な16SrRNA 遺伝子の選抜
19.5 リボソーム可塑性の分子基盤
19.6 16S rRNA の組換え進化
19.6.1 好熱菌Thermus thermophilus を用いた16S rRNA 遺伝子の相同性の検証
19.6.2 T. thermophilus
19.6.3 T. thermophilus における16S rRNA遺伝子の水平伝播実験
19.7 翻訳システムが改変された変異株の表現型進化
索引
執筆者紹介
■編者
金井昭夫 慶應義塾大学先端生命科学研究所
■執筆者(五十音順)
浅野吉政 東京大学大学院理学系研究科
井川善也 富山大学学術研究部理学系
石野良純 九州大学名誉教授
位髙啓史 東京医科歯科大学生体材料工学研究所/大阪大学感染症総合教育研究拠点
市橋伯一 東京大学大学院総合文化研究科
伊藤拓宏 理化学研究所生命機能科学研究センター
稲田利文 東京大学医科学研究所
岩崎由香 理化学研究所生命医科学研究センター
甲斐田大輔 富山大学学術研究部医学系
片岡直行 東京大学大学院農学生命科学研究科
小林穂高 徳島大学先端酵素学研究所
齊藤博英 京都大学iPS細胞研究所
程久美子 東京大学大学院理学系研究科
泊 幸秀 東京大学定量生命科学研究所
友廣拓生 近畿大学大学院薬学研究科
中川真一 北海道大学大学院薬学研究院
廣瀬哲郎 大阪大学大学院生命機能研究科
藤原俊伸 近畿大学大学院薬学研究科
堀 弘幸 愛媛大学大学院理工学研究科
水内 良 早稲田大学理工学術院
宮崎健太郎 大阪大学生物工学国際交流センター
森田鉄兵 慶應義塾大学先端生命科学研究所
山地紀香 京都大学iPS細胞研究所
吉久 徹 兵庫県立大学大学院理学研究科