ⓔコラム10-15-6 神経原性腫瘍 (neurogenic tumor)
神経原性腫瘍は縦隔腫瘍の10~20%を占め,後縦隔に好発する1).成人では90%以上が神経線維由来の良性腫瘍であるが,小児では神経細胞由来の腫瘍が多く,40~60%が悪性である.
神経線維 (肋間神経,交感神経,横隔神経,迷走神経など) から発生する腫瘍の多くは,神経鞘腫 (neurilemmoma,schwannoma) や神経線維腫 (neurofibroma) などの良性であるが,von Recklinghausen病を伴う症例は,悪性化率が比較的高く2,3),注意が必要である.後縦隔胸椎近傍に好発し,良性の多くは無症状であるが,椎間孔へと進展した亜鈴型腫瘍 (dumbbell–type tumor) は脊髄圧迫症状 (脱力,麻痺,疼痛) を生じることがある.また,上位の交感神経 (おもにTh2より高位) が圧迫された場合,Horner症候群を認めることがある.
神経細胞 (神経節細胞や傍神経節細胞) 由来の腫瘍は機能性と非機能性に大別される.良性の非機能性腫瘍は健診などで偶発的に診断されることが多いが,機能性腫瘍は内分泌活性によってさまざまな症状を呈する.交感神経節や脊髄神経節由来の神経節神経腫 (ganglioneuroma) には血管作動性腸管ペプチド (vasoactive intestinal peptide: VIP) を産生する機能性腫瘍があり,下痢や電解質異常を伴う.傍神経節細胞由来の腫瘍である傍神経節腫 (paraganglioma) のなかでも,カテコールアミン産生能を有する機能性では褐色細胞腫と似た性質を示し,高血圧症が認められる.
治療は外科的切除が行われ,亜鈴型腫瘍では脊柱管内の腫瘍摘除も加える.無症状で増大傾向がみられない場合は,経過観察とされることもある.成人例の予後は良好であり,完全切除後の再発はほとんどみられない.
〔谷村恵子・髙山浩一〕
■文献
Strollo DC, Rosado–de–Christenson ML, et al: Primary mediastinal tumors: part II. Tumors of the middle and posterior mediastinum. Chest, 1997; 112: 1344–1357.
Brasfield RD, Das Gupta TK: von Recklinghausen’s disease: a clinicopathological study. Ann Surg, 1972; 175: 86–104.
Hosoi K: Multiple neurofibromatosis (von Recklinghausen’s disease) with special reference to malignant transformation. Arch Surg, 1931; 22: 258–263.