ⓔコラム10-2-9 潜在性結核感染症の治療
現在,潜在性結核感染症の治療にはINH単剤6または9カ月,INHを使用できない場合にはRFP 4カ月が推奨されている1).世界保健機関 (World Health Organization: WHO) は,2015年に潜在性結核感染症 (LTBI) に関するガイドラインを刊行したが2),それに続いて2018年に更新版を発刊した3).そのなかではLTBI治療に関するメタ解析およびシステマティックレビューの結果をふまえて4),INH単剤6~9カ月,RFP単剤3~4カ月,INH+リファペンチン (RPT) 週1回3カ月療法に加えて,INH+RFP 3~4カ月が推奨レジメに挙げられた.それを受けてわが国でも日本結核病学会治療委員会・同予防委員会で,日本の成績も参照しながらLTBIの治療レジメンの検討が行われた.その結果,INH+RFP 3~4カ月療法はINH 6カ月あるいは9カ月と同様の発病予防効果があり,副作用の出現率にも有意差はないことが確認され,LTBI治療レジメの1つとして提唱された5).今後,学会からの提案を受けて,INH+RFP 3~4カ月療法が結核の医療基準に取り入れられれば,近い将来わが国のLTBI治療は大きく変わるであろう.また,RFP 4カ月治療は従来どおりINHが使えない場合の代替として用いることを原則とするも,活動性結核がないことを確認し,服薬遵守を確実に行えることを前提に,INHによる副作用が問題となる可能性がある場合には使用を認めることも提案されている.
〔長谷川直樹〕
■文献
日本結核病学会予防委員会・治療委員会:潜在性結核感染症治療指針.結核,2013; 88: 497–512.
World Health Organization: Guideline on the management of latent tuberculosis infection. WHO, 2015. ISBN 978 92 4 154890 8 (NLM classification: WF 200)
World Health Organization: Latent tuberculosis infection: updated and consolidated guideline for programmatic management. WHO, 2018. License: CCBY–NC–SA 3. 0IGO
Zenner D, Beer N, et al: Treatment of latent tuberculosis infection: An Updated Network Meta–analysis. Ann Intern Med, 2017; 167: 248–255.
日本結核病学会予防委員会・治療委員会:潜在性結核感染症治療レジメンの見直し.結核,2019; 94: 515–518.