ⓔコラム10-5-3 じん肺健康診断と管理区分の決定
事業者は,粉じん作業に従事する労働者に健康診断を行い,結果に基づいて適切な措置を講じなければならない.健康診断は,①就業時,②定期,③定期外,④離職時に実施する.
じん肺健康診断
じん肺健康診断の流れを図1に示す.じん肺健康診断に沿ってじん肺の診断を行うとともに,合併症の有無,じん肺管理区分を決定し,その後の措置を決定する.
ⅰ) 粉じん作業歴の調査: 粉じんの種類と曝露期間を調査する.
ⅱ) 胸部X線: 陰影を小陰影 (粒状影,不整形陰影) と大陰影に分類する.それぞれの陰影の径により表1のように分類する.小陰影の分布の密度,および大陰影の有無により,表2のように型を分類する.型の分類はじん肺標準X線フィルムを参考に12階尺度で行う.標準フィルムについては,厚生労働省による通達1)を参照のこと.
ⅲ) 胸部所見の確認: 自覚症状として咳,痰,息切れを調査,身体所見として聴診所見,ばち指,浮腫などを調査する.じん肺法の呼吸困難の程度はHugh–Jones分類 (表3) で判定する.
ⅳ) 肺機能検査と機能障害の評価: 肺機能検査は,胸部X検査と併せ,管理区分の決定に必要である.胸部X検査でじん肺の陰影があり,かつ胸部臨床検査で合併症がない場合に実施する.肺機能検査のフローチャートを図2に示す.
ⅴ) 合併症の診断: じん肺では以下の6つの疾患を合併症と規定している.①肺結核,②結核性胸膜炎,③続発性気胸,④続発性気管支炎,⑤続発性気管支拡張症,⑥原発性肺癌.
ⅵ) じん肺の管理区分と措置: 胸部X線検査,および肺機能検査の結果に基づき,表4のように管理区分を決定する.さらに管理区分と合併症の有無によって,図3のように就業上の措置を決定する.
〔石井幸雄〕
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