ⓔコラム10-7-5 手術後の無気肺
無気肺は手術後,特に胸部,腹部手術後の肺合併症として高頻度にみられる1).手術直後よりも手術翌日以降に多い.手術後の無気肺は無症状のこともあるが,息切れ,低酸素血症として観察されることもある.術後無気肺の原因として,肺コンプライアンス低下,局所的な換気障害,気道分泌物のうっ滞などが挙げられる.術後疼痛のために深呼吸や咳ができないことも間接的な原因となる.対処法として気道分泌物が多い場合には胸部理学療法 (体位ドレナージやパーカッション) や分泌物を適切に吸引することが有用である.口からの吸引は患者が分泌物を喀出できる場合には有用であるが,多くの患者は自力で喀出できないので,経鼻的な気管からの吸痰が望ましい.逆に気道分泌物が少なく,低酸素血症を伴う場合には持続的気道陽圧法 (continuous positive airway pressure: CPAP) を試みてもよい2).
〔石塚 全〕
■文献
Xue FS, Li BW, et al: The influence of surgical sites on early postoperative hypoxemia in adults undergoing elective surgery. Anesth Analg, 1999; 88: 213–219.
Squadrone V, Coha M, et al: Continuous positive airway pressure for treatment of postoperative hypoxemia: a randomized controlled trial. JAMA, 2005; 293: 589–595.