ⓔコラム11-4-13 ゲノム解析による胃癌の遺伝子サブタイプの分類
2014年米国のThe Cancer Genome Atlas (TCGA) Research Networkによる遺伝子解析により,胃癌が遺伝子的に4つのサブタイプに分類されることが示された1)(図1).合計295例の原発性胃癌を臨床的特徴と分子生物学的に解析を行った.それぞれ,①EBV陽性でPIK3CA変異が多いタイプ (EBVタイプ),これは細胞増殖刺激情報伝達に関するPIK3CAの繰り返す遺伝子変異,過剰なDNAメチル化,細胞質型チロシンキナーゼJAK2,免疫チェックポイント受容体となるCD274(PD–L1)PDCD1LG2(PD–L2) の増幅を認める,②マイクロサテライト不安定性を示すタイプ (MSIタイプ),これはマイクロサテライト不安定があり点突然変異の頻度が高く,ターゲットなる癌遺伝子蛋白をコードする遺伝子の変異も含まれている,③遺伝子的に安定なタイプ (GSタイプ),これはdiffuse typeの組織型が約3/4を占める.diffuse typeの新たなドライバー遺伝子とされるRHOAの変異が豊富である,④染色体の不安定なタイプ (CINタイプ),これは染色体の不安定性をもち,サブタイプのなかでは約半数と最も多いタイプである.受容型チロシンキナーゼの増幅が認められ,TP53遺伝子変異が多く含まれる.これらの遺伝子的特徴に分類されたことは,これまでの形態による分類にとらわれず症例の層別化を可能にし,将来対象となる遺伝子および遺伝子産物をターゲットとする分子標的治療薬開発など診断・治療への応用が期待される.
〔兒玉雅明・村上和成〕
■文献