ⓔコラム11-4-20 内ヘルニア1,2)
症状
腹痛 (おもに食後の上腹部痛),悪心・嘔吐,上腹部膨満感などがみられる.間欠的な食後の腹部違和感から絞扼性 (こうやくせい) イレウスに至る腹部の疝痛まで程度はさまざまである.
原因・病態
胃切除後のRoux–en–Y再建では,腸間膜間 (①挙上空腸間膜と横行結腸間膜の間 (Petersen’s defect),②空腸–空腸吻合部の腸間膜の間,③挙上空腸を通した横行結腸の小孔 (結腸後再建の場合) に間隙ができるため,小腸が入り込み内ヘルニアを生じることがある.腹腔鏡手術 (癒着が少なくヘルニア門が閉鎖されにくい),胃切除後の高度な体重減少 (腸間膜脂肪組織の減少による間隙の開大),手術時の不十分な腸間膜間隙の縫合閉鎖などが原因となる.発生頻度は胃切除術後0.14~2%であるが,腹腔鏡手術 (0.16~2%) では開腹手術 (0.12~0.3%) よりも発生が多い.
診断
腹部CT検査におけるwhirl sign (腸間膜の軸捻転により腸間膜血管が渦巻き状を呈する) が有用である.絞扼性イレウスの可能性があるため早期診断・早期治療が重要である.
治療
自然整復はまれで再手術 (陥入小腸の整復とヘルニア門の閉鎖) を行う.絞扼性の場合は小腸切除も行われる.
〔中田浩二〕
■文献
Miyagaki H, Takiguchi S, et al: Recent Trend of Internal Hernia Occurrence After Gastrectomy for Gastric Cancer. World J Surg, 2012; 26: 851–857.
三輪高嗣,比企直樹,他:胃切除術後Petersen’s defectへ内ヘルニアを発症した11例の検討.日本内視鏡外科学会雑誌,2013; 18: 665–670.