ⓔコラム11-4-23 下痢
症状
軟便・水様便,排便回数の増加,急な便意がみられる.
原因・病態
食物の小腸内急速流入,腸蠕動の亢進,低酸・無酸による腸内細菌叢の変化,膵外分泌機能不全,食物と十二指腸液 (膵液・胆汁) が混ざるタイミングのずれ (同期不全;postcibal pancreatico–biliary asynchrony) などが原因となる.
術式との関連
胃排出亢進との関連が報告されており1),幽門側胃切除Billroth–Ⅰ法再建では残胃が小さいと下痢になりやすい2).
診断
便形状と回数を確認する.感染性腸炎・炎症性腸疾患・器質的疾患 (大腸癌など) を除外する.
治療
ⅰ) 食事生活指導: 過食,早食い,食事中の水分摂取,高脂肪食,辛い食品,飲酒,コーヒー,冷たい飲料,牛乳 (乳糖不耐症の場合) を避ける.整腸作用がある乳酸菌・ビフィズス菌・オリゴ糖を含んだ食品を摂取する.
ⅱ) 薬物治療: 病態に応じて整腸薬,消化酵素薬,腸管蠕動抑制薬,陰イオン交換樹脂,コレスチミド (胆汁性下痢の場合) などを投与する.胃切除後には週に2~3日,1日1~2回程度の下痢はしばしばみられるが生活上問題になることは少ない.下痢の回数が多く腹痛や栄養障害を伴う場合は,原因を特定するための検査を行う.
〔中田浩二〕
■文献
Konishi H, Nakada K, et al: Impaired Gastrointestinal Function Affects Symptoms and Alimentary Status in Patients After Gastrectomy. World J Surg, 2016; 40: 2713–2718.
Misawa K, Terashima M, et al: Evaluation of postgastrectomy symptoms after distal gastrectomy with Billroth–I reconstruction using the Postgastrectomy Syndrome Assessment Scale–45 (PGSAS–45). Gastric Cancer, 2015; 18: 675–681.