ⓔコラム11-4-27 脂肪消化吸収障害 (脂肪便)

概念

 摂取した脂肪が消化吸収されず便に混じるものを脂肪便という.

症状

 脂肪便は,白っぽい外観を呈し水に浮き独特な悪臭を放つ.脂肪の消化吸収障害のために体重減少や脂溶性ビタミン (A・D・E・K) の欠乏症をきたすことがある.

原因・病態

 脂肪は膵消化酵素で加水分解され胆汁酸によりミセル化された後,小腸粘膜から吸収される.胃切除後には,膵液・胆汁分泌の減少,食物の急速排出による相対的な消化酵素の不足,十二指腸液が輸入脚内に停滞し食物と混和するタイミングがずれる同期不全が生じる1).また胃酸分泌低下による小腸内の細菌増加のため胆汁酸が非抱合化され,脂肪のミセル化が障害される.これらが複合的に働いて便中脂肪量が増えることが原因とされる.

術式との関連

 胃全摘,輸入脚を形成する手術に起きやすい.

診断

 便性状の確認が必要である.ズダンⅢ(Sudan Ⅲ) 染色による便中脂肪球の増加が診断に有用である.

治療

 脂質の適量摂取を指導する.消化酵素薬の投与.脂溶性ビタミン欠乏には脂溶性ビタミン剤を投与する.

〔中田浩二〕

■文献

  1. 谷川允彦,野村 栄治,他:胃癌 胃全摘後再建法 長期成績からみて 空腸間置.外科,1998; 60: 1001–1006.