ⓔコラム11-4-29 体重減少 (るいそう)

症状

 胃切除後3~6カ月後くらいまで体重が減少し,1~2年である程度回復することが多い.脂肪量の減少が主体であるが,筋肉量も減少するとの報告がある.体重減少は,術後患者の身体活動性に影響を及ぼし,また15%以上の体重減少は進行胃癌の術後補助化学療法の継続性を低下させるとの報告がある1)

原因・病態

 経口摂取量の減少 (胃の貯留能減少,グレリン分泌の減少),消化吸収能の低下 (膵外分泌機能低下,同期不全),術後炎症の持続 (手術侵襲,合併症) などが原因となる.

 なお,グレリンとは胃 (特に胃上部) から分泌される消化管ペプチドホルモンで,食欲増進作用がある【⇨11-1-5-4】.

術式・治療との関連

 貯留能とグレリン分泌が失われる胃全摘術後に最も体重減少が大きい (平均約14%)2).上部早期胃癌に対する機能温存術式として行われる噴門側胃切除後の体重減少は平均約11%と胃全摘術に比べて小さい2)

治療

 分食指導,通常の食事以外に栄養補助食品の投与,などが行われる.高度な栄養障害には人工栄養管理が考慮される.減少した体重は容易に戻らないので体重減少の予防に努めることが大切である.

予防

 胃切除後の食事摂取量と体重変化を注意深く観察し,適宜,外来栄養指導などの介入を行う.体重減少を防ぐことへの患者自身の意識付けを行う.

〔中田浩二〕

■文献

  1. Aoyama T, Yoshikawa T, et al: Body weight loss after surgery is an independent risk factor for continuation of S–1 adjuvant chemotherapy for gastric cancer. Ann Surg Oncol, 2013; 20: 2000–2006.

  2. Takiguchi N, Takahashi M, et al: Long–term quality–of–life comparison of total gastrectomy and proximal gastrectomy by Postgastrectomy Syndrome Assesment Scale (PGSAS–45): a nationwide multi–institutional study. Gastric Cancer, 2014; 18: 407–416.