ⓔコラム14-2-3 CKD診療における病診連携体制とチームアプローチによる集学的治療

 適切な病診連携がCKD進展抑制に重要であることは,さまざまな地域におけるCKD診療連携体制の成功例が実証している.それらを踏まえて,2018年に厚生労働省から発出された「腎疾患対策検討会報告書」 (https://www.mhlw.go.jp/stf/shingi2/0000172968_00002.html) のなかでも,CKD対策の5つの柱の1つである「地域における医療提供体制の整備」において,地域の実情に即した行政,専門医療機関とかかりつけ医のCKD診療における連携体制の構築が目標として掲げられている.そこでCKD診療ガイドライン2018には,適切な病診連携がタイムリーに開始されるよう,かかりつけ医から腎臓専門医への紹介基準が改訂・発表された (ⓔ表14-2-1).従来の紹介基準はCKDステージG3A1区分を3分割して年齢に応じたきめ細かな基準となっていた反面,煩雑であった点は否めない.そこで上述のCKDステージG3aは有意な全死亡リスクとはならないというわが国の健診データ解析の結果も踏まえ,重症度分類と同様にG3A1区分をeGFR 45で2分割し,また年齢も成人病健診の適応となる40歳を境に,40歳未満ではeGFR<60で,また40歳以上ではeGFR<45で腎臓専門医へ紹介するよう推奨している.またCKDステージG1A2,G2A2に相当する軽度の蛋白尿症例であっても,血尿を伴う場合にはIgA腎症やループス腎炎などの腎臓専門医による腎生検診断や治療が必要な腎疾患が含まれるため,紹介するよう推奨している.この紹介基準が適正に機能するためには,かかりつけ医による血清クレアチニン測定によるeGFR,および尿蛋白 (アルブミン) 定量と尿中クレアチニン測定による尿蛋白 (アルブミン)/クレアチニン比の定期的なモニタリングが前提となる.かかりつけ医における尿蛋白 (アルブミン) 定量は実施率が低く,さらなる普及啓発が喫緊の課題であるが,今回の紹介基準には試験紙法による尿蛋白定性検査の結果のみでも照らし合わせられるように,尿蛋白 (アルブミン)/クレアチニン比に加えて定性検査の基準も併記されている (ⓔ表14-2-1).この紹介基準を運用することで,より適切な患者がタイムリーに腎臓専門医に紹介・逆紹介されるようになり,地域の実情や患者の状態に即した最適な二人主治医制による病診連携体制の構築の一助になるものと期待される.さらにこの制度は,受診しやすいかかりつけ医を管理体制に加えて二人主治医体制にすることで,ドロップアウトを減らし,CKD管理の継続性にも役立つものと想定される.

 かかりつけ医から腎臓専門医・専門医療機関へCKD患者を紹介することのもう1つの有用性は,多職種からなるチームアプローチによる集学的治療の提供である.集学的治療は糖尿病性腎臓病 (DKD) の発症・進展抑制に有効であり,近年では各管理目標をより厳格にすることで糖尿病臓器合併症への抑制効果が強化されることが報告されている1).また,この集学的治療の達成には,多職種からなるチームアプローチによる患者指導が有効であることがRCTにより実証されている2).さらにCKDには食事療法や生活習慣の改善,服薬アドヒアランスの維持,腎毒性のある薬剤の回避,長期の疾患管理に伴う精神的なケアなど生活全般にわたっての細やかな指導が必要になる.これらの患者指導による行動変容について,多職種からなるチームアプローチが有効であることが報告されている (ⓔ図14-2-2)3)

〔岡田浩一〕

■文献

  1. Ueki K, Sasako T, et al: Effects of an intensified multifactorial intervention on cardiovascular outcomes and mortality in type 2 daibetes (J–DOIT3): an open–label, randomized controlled trial. Lancet Diabetes Endocrinol, 2017; 5: 951–964.

  2. Chan JC, So WY, et al: Effects of structured versus usual care on renal endpoint in type 2 diabetes: the SURE study: a randomized multicenter translational study. Diabetes care, 2009; 32; 977–982.

  3. Lapez–Vargas PA, Tong A, et al: Educational interventions for patients with CKD: A systematic review. Am J Kidney Dis, 2016; 68; 353–370.