ⓔコラム14-6-5 STEC–HUSの病態生理
STECの志賀毒素 (Shiga toxin: STX) は,STX1,STX2の2種類があるが後者がより毒性が強い.腸管上皮から血液に入ったSTXは,血流あるいは多形核白血球のGb3受容体 (globotriosylceramide 3 receptor: CD77) に結合し病変部に運ばれ細胞内に取り込まれる.STXはリボソームでの蛋白合成を阻害し,細胞傷害やアポトーシスを起こす1).STXは血管内皮細胞や単球からIL–1β,IL–6,IL–8,TNF-αなどの炎症性サイトカインやケモカインの産生を誘導し,血管内皮ではICAM–1,VCAM–1,E–selectin,などの細胞接着因子の発現を増強させ炎症を惹起する.さらにSTX2は補体活性化の制御に最も重要なH因子に結合し補体の活性化をもたらす.さらに,血管内皮でのADAMTS–13活性の低下,活性酸素なども病態に関与する.傷害された内皮細胞表面では,血小板凝集と凝固の活性化が進行し,血管内を占拠・閉塞するフィブリン血栓が生じる.その血栓に赤血球が衝突し物理的溶血が生じ,血流障害により臓器障害が生じる.
〔伊藤秀一〕
■文献