ⓔコラム16-2-6 グルカゴンによる低血糖症
グルカゴンはcounter regulatory hormoneとして血糖上昇作用をもつ一方で,高血糖に伴う低血糖症が投与90~120分後に生じるうることが報告されている1).上部消化管内視鏡検査前患者240人に対して,消化管蠕動抑制を目的として臭化ブチルスコポラミン10 mg (対照群) あるいはグルカゴン1 mgのいずれかをランダムに筋肉内投与し,さらにそれぞれの群において内視鏡検査後1時間後にグルコース5 gを与えた群と与えない群と合計4群に分け,検査後2時間まで絶食を指示し検査施行後5時間以内の低血糖症状 (全身倦怠感,動悸,発汗または空腹感) を検討したところ,グルカゴン投与群ではグルコースを投与されなかった60人中20人,グルコースを投与された60人中10人が何らかの低血糖症状を認め対照群 (グルコースを投与されなかった60人中10人,グルコースを投与された60人中7人) よりも有意に高かった.グルカゴン投与による一過性の高血糖に対して遅発性インスリン分泌増加が生じる,いわゆる反応性低血糖症がその病態とされるが詳細な機序には不明な点も多い.
〔後藤広昌〕
■文献