ⓔコラム17-10-16 リンパ腫様胃腸症 (竹内病) (lymphomatoid gastroenteropathy, Takeuchi disease)

 2006年に米国のVegaらが1例報告し1),2010年にわが国の竹内らが10例を報告して2)疾患として認識された原因不明の消化管疾患である.壊死性リンパ節炎 (菊池病) との関連はないが,非腫瘍性のリンパ系腫瘤形成疾患という点が共通している.その後,米国からも8例の報告があった3).病変の主座は胃であるが,まれに腸管病変も認める.症状はなく,検診など偶然の機会に診断されることが多い.胃癌術後例に多いが,これは内視鏡によるフォローアップ検査の機会が多いためと考えられている.内視鏡像では,1 cm程度の平坦で辺縁整な隆起性病変を認め,表面に陥凹や潰瘍を有することもある.病理像ではNK細胞のシート状の増殖を特徴とするが (図1),NK細胞リンパ腫で認められる広範な壊死像はなく,EBV陰性である点が決定的に異なる.MALTリンパ腫のようにリンパ上皮性病変 (lymphoepithelial lesion) を認めることもある.Helicobacter pyloriは陽性例が多いが陰性例もあり,その病原意義は不明である.無治療ないし対症療法のみで病変は消失し予後は良好である.年余にわたり再燃・消退を繰り返す例もある.頻度などは明らかでない.疾患の本態も腫瘍性か反応性か明らかでないが,当面の化学療法を避けるという意味でNK細胞リンパ腫との鑑別が必要である4)

図1 リンパ腫様胃腸症 (竹内病) の胃生検像. NK細胞がシート状に増生しており,壊死像はみられない.

〔鈴木律朗〕

■文献

  1. Vega F, Chang CC, et al: Atypical NK–cell proliferation of the gastrointestinal tract in a patient with antigliadin antibodies but not celiac disease. Am J Surg Pathol, 2006; 30: 539–544.

  2. Takeuchi K, Yokoyama M, et al: Lymphomatoid gastropathy: a distinct clinicopathologic entity of self–limited pseudomalignant NK–cell proliferation. Blood, 2010; 116: 5631–5637.

  3. Mansoor A, Pittaluga S, et al: NK–cell enteropathy: a benign NK–cell lymphoproliferative disease mimicking intestinal lymphoma: clinicopathologic features and follow–up in a unique case series. Blood, 2011; 117: 1447–1452.

  4. Suzuki R: Pathogenesis and treatment of extranodal natural killer/T–cell lymphoma. Semin Hematol, 2014; 51: 42–51.