ⓔコラム5-46-1 慢性疲労症候群 (chronic fatigue syndrome: CFS)
定義
慢性疲労症候群 (CFS) は,突然発症する原因不明の激しい全身倦怠感を主訴とし,強度の疲労感のために日常生活や社会生活に支障をきたす疾患である.1988年に米国疾患対策センター (CDC) により報告が行われて以降,世界各国から報告されているが,現在まで確定診断につながる検査異常は発見されていない.最近はCFSの名称が誤解や偏見の原因になるとの指摘から,筋痛性脳脊髄炎/慢性疲労症候群 (myalgic encephalomyelitis/chronic fatigue syndrome: ME/CFS) が用いられるようになっている.
病態生理
現在のところ明らかにはなっていない.ただし,けっして生理的な疲労や詐病のようなものではなく,中脳や視床を中心とした脳機能の異常の関与がポジトロンCTなどで確認されている.その背景には,免疫機能の異常やウイルス感染などが推測されている1, 2).
診断
確実な診断に至るバイオマーカーが存在しないため,これまでは厚生労働省 (旧厚生省) の研究班がHolmes基準2)をもとに1991年に作成した厚生省CFS診断基準が使われてきた.最近,日本医療開発機構 (AMED) 障害者対策総合研究開発事業,神経・筋疾患分野の「慢性疲労症候群に対する治療法の開発と治療ガイドラインの作成」研究班が診断基準の案 (表1,表2,表3,表4,表5) を提唱している3).
治療
現在のところ科学的根拠のある有効な治療は見つかっていない.L–カルニチン,漢方薬,認知行動療法,向精神薬治療,抗神経炎症薬剤などが臨床試験されている3).
〔山下秀一〕
■文献
Sotzny F, Blanco J, et al: Myalgic encephalomyelitis / chronic fatigue syndrome–evidence for an autoimmune disease. Autoimmune Rev, 2018; 17: 601–609.
Holmes GP, Kaplan JE, et al: Chronic fatigue syndrome: a working case definition. Ann Intern Med, 1988; 108: 387–389.
日本医療開発機構 (AMED) 障害者対策総合研究開発事業 神経・筋疾患分野「慢性疲労症候群に対する治療法の開発と治療ガイドラインの作成」研究班:平成27年度研究成果報告書 (総括報告),2015. http://www.fuksi-kagk-u.ac.jp/guide/efforts/research/kuratsune/