ⓔコラム7-12-1 糸状虫症の原因・病因と疫学

原因・病因

 リンパ系糸状虫症は,蚊により媒介され,蚊の吸血の際に感染幼虫が経皮感染する.リンパ管において,マレー糸状虫は3カ月程度,バンクロフト糸状虫では1年程度で成虫となる.成虫の寿命は4~5年とされる.リンパ管に寄生した成虫や産出されるミクロフィラリアにより,炎症性・アレルギー性の急性症状,リンパ管の灌流障害による慢性症状を呈する.

 回旋糸状虫症はブユにより媒介され,感染幼虫が経皮感染する.成虫は皮下に感染し,ミクロフィラリアを産出する.ミクロフィラリアが眼に侵入することで生じる失明が大きな問題である.

疫学

 リンパ系糸状虫症は九州・沖縄地域,東京都の八丈小島でかつて流行していたが,1980年頃までに根絶された.世界的には,リンパ系糸状虫症は熱帯・亜熱帯地域,回旋糸状虫症はアフリカに分布する1)

〔三木田 馨〕

■文献

  1. Gyapong JO, Kumaraswami V, et al: Treatment strategies underpinning the global programme to eliminate lymphatic filariasis. Expert Opin Pharmacother, 2005; 6: 179–200.