ⓔコラム7-3-25 動物のブルセラ症

 動物のブルセラ症の自然感染は経口,経皮,交尾,粘膜感染などすべての経路で成立する (図1)1).動物間のみならず感染動物からヒトへの感染もほぼ同様の経路によって成立する.動物の流産胎子,胎盤,悪露,精液,乳汁に大量の菌が存在し感染源となる.妊娠動物が感染した場合,ほかの臓器に比較して胎盤および胎子において菌の増殖がみられる.流産の発生機構も詳細は不明であるが,胎盤で菌が増殖することにより胎盤を構成する細胞の機能が阻害され,流産が引き起こされると考えられる.また,胎子は母体にとって異物であり,免疫拒絶反応を抑制し妊娠を維持するために,母体内ではTh2サイトカインが優位になっている.宿主にはブルセラ属菌の感染に応答しTh1が誘導され,菌の細胞内増殖を阻害することによって病態の進行を抑える機構が存在する.妊娠動物の場合も同様に菌の感染によってTh1が優位になり,母体のTh1/Th2のバランスが崩れることにより流産が起こるのではないかと考えられている2)

図1 ブルセラ属菌の感染.

〔度会雅久〕

■文献

  1. Atluri VL, Xavier MN, et al: Interactions of the human pathogenic Brucella species with their hosts. Annu Rev Microbiol, 2011; 65: 523–541.

  2. Entrican G: Immune regulation during pregnancy and host–pathogen interactions in infectious abortion. J Comp Pathol, 2002; 126: 79–94.