ⓔコラム10-1-8 体積倍化時間

 病変の体積が2倍になるまでに要する時間を体積倍加時間 (ダブリングタイム) という.生体内では,理論的には1つの細胞が,2つ,4つ,8つと分裂するのに要する時間を意味する.実際には,免疫の影響やアポトーシスなどの影響などにより,理論値より長くなる.通常,悪性腫瘍では20~400日とされている.つまり,体積倍加時間が20日未満であれば,感染症のような急性疾患,400日以上であれば,良性腫瘍のような緩徐に増大する病変を疑うことが可能である.結節や腫瘤の特徴のみならず,既存肺の状態も体積倍加時間に影響を与える.肺気腫や間質性肺炎がベースに存在する場合には,通常よりも体積倍加時間が短くなり,結節や腫瘤の増大速度は速くなる.肺気腫や間質性肺炎の患者に肺癌を疑う結節を認めた場合は,通常よりも短い間隔で,注意深く経過観察することが必要である.

〔梁川雅弘〕