ⓔコラム10-2-4 肺炎の疫学
肺炎による死亡率の推移を100年単位でみると,1918年に大きなピークがあることがわかる (図1).このピークはスペインかぜによるものであり,この時代にはインフルエンザウイルス感染症,および二次性細菌性肺炎で多数の死者が出たことがわかる.
肺炎 (市中肺炎に院内肺炎を合わせたもの) は,過去50年以上にわたって日本人の死因の第4位を占め,2011年に第3位となった.この順位は2016年まで同様であった.しかし2017年以降この「肺炎」が死因の第3位から第5位に後退した理由は,2016年までは順位に含まれていなかった「誤嚥性肺炎」を,2017年より死因順位に用いる分類項目に追加していることによる.2017年において「誤嚥性肺炎」は死因の第7位であり,「肺炎」と「誤嚥性肺炎」の両者を足すと,死因の第3位に復活する.日本人の死因順位の変化は,高齢者が肺炎で死亡した際に,「老衰」,「肺炎」,または「誤嚥性肺炎」というさまざまな病名が死亡診断書に記載されることに伴うものである.
さてもし日本人の死因から肺炎が除去されると,平均寿命の延長はいかばかりのものであろうか.これについては特定死因を除去した場合の平均余命の延びという厚生労働省の試算があり,肺炎の死亡が仮になくなったとしても,0歳,65歳,75歳,90歳のすべての年齢層の男女において,平均寿命の延長は1歳以下であることが示されている1).
〔藤田次郎〕
■文献