ⓔコラム10-2-6 新たな活動性結核の診断技術
尿中抗原検査
感染症領域では尿中抗原検査といえば,肺炎球菌やレジオネラが想起されるが,結核でも試みが進められてきた.特に結核には定着の概念はなく,菌体だけでなく菌体成分が検出されれば診断的意義は高い.ドイツのAlere 社からイムノクロマトグラフィ法を用いて結核菌の細胞壁の構成成分であるlipoarabinomannan (LAM) を尿で検出するキットが実用化されているが,感度は十分といえず普及していない1).一方,近年富士フイルム社により検出感度を向上させた尿中のLAM検出キットが開発され2),HIV陽性者例を対象にAlere社製のキットとの比較試験が実施され,富士フイルム社製キットの検出感度が有意に高いことが報告された3).今後,HIV陰性例における検討が期待されている.尿検体は患者に負担なく,また患者の病状を問わず採取可能であり,今後増加する気道系検体の採取が難しい超高齢者の結核や小児結核の診断に有用であろう.ただし感染性の判断や薬剤感受性の情報を得ることは難しいので,菌の検出に努めることは重要である.
呼気分析
呼気中に含まれる結核菌が産生する,結核菌特異的なガス成分の解析を活動性結核の診断に生かす開発が進められている4).今のところ十分な感度は得られてないが,呼気検体は非侵襲的に採取され,肺結核ならば病変部由来の検体に相当する点は魅力的である.今後の研究の発展が期待される.
〔長谷川直樹〕
■文献
Shah M, Hanrahan C, et al: Lateral flow urine lipoarabinomannan assay for detecting active tuberculosis in HIV–positive adults. Cochrane Database Syst Rev, 2016; 5: CD011420.
Sigal GB, Pinter A, et al: A novel sensitive immunoassay targeting the 5–methylthio–xylofuranose–lipoarabinonannnan epitope meets the WHO’s performance target for tuberculosis diagnosis. J Clin Microbiol, 2018; 56: e01338–e01318.
Broger T, Sossen B, et al: Novel lipoarabinomannan point–of–care tuberculosis test for people with HIV: a diagnostic accuracy study. Lancet Infect Dis, 2019; 19: 852–861.
Saktiawati AMI, Putera DD, et al: Diagnosis of tuberculosis through breath test: a systematic review. EBio. Medicine, 2019; 46: 202–214.