ⓔコラム10-5-5 ガスや化学物質による肺疾患 (ⓔ表10-5-2)

 塩素,二酸化窒素,硫化水素,二酸化硫黄などの刺激性ガスを産業事故などにより急性,高濃度曝露されると,肺が広範囲に損傷を受け,急性呼吸促迫症候群 (acute respiratory distress syndrome: ARDS) や閉塞性細気管支炎など重篤な病態を引き起こす.比較的低濃度の慢性曝露では慢性気管支炎などが惹起される.ヒ素化合物や芳香族炭化水素化合物などは発癌性が問題となる.イソシアネートなど一部の化学物質はアレルギー反応を誘発し,喘息や過敏性肺炎を引き起こす.

 特定の労働環境下 (特定の職業性物質の曝露) で発症する喘息を職業性喘息とよぶ.原因物質は感作物質と刺激物質 (塩素,煙など) に分類され,さらに感作物質は高分子と低分子物質に分けられる (表1).

表1 職業性喘息―その原因物質と関連職種 (Tarlo SM, Lemiere C: N Engl J Med, 2014; 370: 640–649より作成).

〔石井幸雄〕