ⓔコラム10-7-3 一側肺全体,各肺葉無気肺の画像所見
一側肺全体の無気肺では患側横隔膜の挙上,心・縦隔陰影の患側への偏位,健側肺の過膨脹がみられる.右肺上葉無気肺では右傍気管部に底辺を有するコンソリデーション,上中葉間裂の挙上,右肺門挙上,気管の右側への偏位,肺虚脱が進むと,上縦隔の右へのわずかな偏位のみになる.側面像では上中葉間裂は上方へ,上下葉間裂は前方へ偏位する.中葉無気肺は胸部単純X線正面像では右心第2弓に底辺をおく三角形の淡い陰影を呈するが,虚脱が進むと,右心第2弓の不鮮明化 (シルエットサイン陽性) 所見のみとなる.側面像では上中葉間裂と中下葉間裂が接近した楔状 (けつじょう) 陰影を呈する.右肺下葉無気肺では正面像で右横隔膜に底辺をおく淡い陰影,右横隔膜挙上,右肺門の下方偏位に加えて,右横隔膜のシルエットサインが陽性になる.対照的に,右心第2弓のシルエットが消失しないのが特徴である.側面像では上下葉間裂は下方へ,中下葉間裂は後方へ偏位する.左肺上葉無気肺では正面像で右上肺野から下肺野に及ぶ境界不鮮明な陰影,大動脈弓の不鮮明化 (シルエットサイン陽性) がみられ,舌区に無気肺が及ぶと心左縁のシルエットが不鮮明化する.左横隔膜挙上,気管の左側への偏位,左主気管支の上方への偏位もみられる.無気肺が進行すると側面像では前胸壁に沿った帯状陰影を呈する.左下葉無気肺では正面像で心陰影に重なる胸部下行大動脈左縁のシルエットの消失 (シルエットサイン陽性) のほか,左横隔膜挙上,左肺門の下方偏位,左横隔膜のシルエット消失 (シルエットサイン陽性) などがみられる(ⓔ図10-7-1).
〔石塚 全〕