ⓔコラム11-1-6 内視鏡検査の実際
電子内視鏡に代表される軟性鏡による診断では,内視鏡操作技術とさまざまな症例経験が必要である.内視鏡検査に興味をもつ読者に参考となるように,筆者が行った上部消化管内視鏡検査3症例を呈示する.【症例1】は薬剤内服歴がなくHelicobacter pylori感染もない患者で,スクリーニング検査の際にしばしば遭遇すると思われる.【症例2】は最近注目されているプロトンポンプ阻害薬 (proton pump inhibitor: PPI) 関連胃症1)と考えられる症例である.【症例3】は強皮症に合併した難治性逆流性食道炎であるが,胃角部小弯を正面視することができなかったため筆者にとって不満足な内視鏡検査になった.内視鏡画像の連続再生および動画も呈示したので,参考にしていただきたい.
なお,内視鏡検査報告書はJED (Japan Endoscopy Database)2)に対応した内視鏡情報管理システムNEXUS (富士フイルム) を用いて行った.また内視鏡画像とその所見などは,すべてありのままを呈示した.
〔中村哲也〕
■文献
加藤元嗣:PPI関連胃症 PPI–related gastropathy.胃炎の京都分類 改訂第2版,日本メディカルセンター,2018; 96–101.
日本消化器内視鏡学会:JEDについて 設立背景と目的.
【症例1】40歳代,女性.
主訴:胃痛,むかつき,呑酸,咽頭違和感
既往歴など:10年前に胃ポリープを指摘された.H. pyloriの除菌歴なし.非喫煙,非飲酒.
悪性腫瘍の家族歴:なし
内服歴:なし
内視鏡検査法:鎮痙剤・鎮静剤なし,炭酸ガス送気使用,経口挿入.IEE (NBI) 併用.
使用機種:GIF–P260 (オリンパス,面順次方式電子内視鏡)
検査場所:増山胃腸科クリニック (大田原市,増山仁徳院長)
内視鏡画像:ⓔ動画11-1-4 (134枚の静止画を連続再生) 参照
内視鏡検査所見・診断:report (図1) 参照
検査時間:12分
撮影枚数:134枚
生検結果:Group 1 fundic gland polyp
【症例2】60歳代,女性.
主訴:胃もたれ,圧迫時の胃痛
既往歴など:H. pyloriの除菌歴なし.非喫煙,非飲酒.
悪性腫瘍の家族歴:兄,食道癌.姉,大腸癌.
内服歴:ランソプラゾール15mg/日
内視鏡検査法:鎮痙剤なし,鎮静剤:ミダゾラム0.9 mL,炭酸ガス送気使用,経口挿入.IEE (NBI) 併用.
使用機種:GIF–H290 (オリンパス,面順次方式電子内視鏡)
検査場所:増山胃腸科クリニック (大田原市,増山仁徳院長)
内視鏡画像:ⓔ動画11-1-5 (144枚の静止画を連続再生)
内視鏡検査所見・診断:report (図2) 参照
検査時間:12分
撮影枚数:144枚
生検結果:Group 1 fundic gland polyp
【症例3】80歳代,女性.
主訴:咽頭違和感,呑酸,げっぷ,前屈時の胸やけ (Fスケール7点)
既往歴など:強皮症 (limited type).H. pyloriの除菌歴なし.非喫煙,習慣飲酒 (赤ワイン1~2杯/日).
悪性腫瘍の家族歴:なし
内服歴:ファモチジン20 mg,サルポグレラート塩酸塩3錠/日.
内視鏡検査法:鎮痙剤・鎮静剤なし,炭酸ガス送気使用,経口挿入.IEE (BLI,LCI併用).
使用機種:EG–L580NW7 (富士フイルム,原色カラーフィルター同時方式電子内視鏡)
検査場所:獨協医科大学病院 (栃木県下都賀郡)
内視鏡画像:ⓔ動画11-1-6 (122枚の静止画を連続再生)
内視鏡検査所見・report (図3) 参照
内視鏡検査ビデオ:ⓔ動画11-1-7参照
検査時間:14分
撮影枚数:122枚
生検結果:なし