ⓔコラム11-3-12 肝癌合併食道静脈瘤の治療指針

 高度肝障害 (Child–Pugh C,T–bil 4 mg/dL以上) の有無とVp 3,4の有無の2つの因子の組み合わせから治療法を選択する.

 出血例

 緊急出血例では,全身管理下に緊急内視鏡を行いEV食道静脈瘤からの出血点を確認したら,直ちにOリングで出血点を結紮し止血する.その後は全身状態の改善を待って待期的に適切な治療を行う.

 待期・予防例

 高度肝障害がなくVp 0~2であれば肝硬変症例と同様の治療法で対処する.ただし,Vp 2の場合は近い将来Vp 3への進展があるので,より徹底した治療 (地固め法) を施行しておく.その結果,たとえVp 3に進展しても食道静脈瘤出血を未然に防止できることがある.

 高度肝障害がなくVp 3,4の場合は,門脈圧が急激に上昇し,静脈瘤血流量が多くなっているのでEIS単独では効果が得られないことが多い.5%EOを供血路まで十分に注入した直後に針穴をEVLで結紮する方法 (EIS・EVL同時併用法:EISL)1)をとるか,あるいはEVLを密にかける密集法単独でいくか,あるいはEVL後にAS法やAPCで地固めを追加する方法で対処するのが効果的と考えられる.一方,高度肝障害がある場合はEOを使用できないのでEVL単独か,EVL後にAS法あるいはAPCで地固めを追加する.

〔小原勝敏〕

■文献

  1. Nishikawa Y , Hosokawa Y, et al : Simultaneous combination of endoscopic sclerotherapy and ligation for esophageal varices. Gastrointest Endosc, 1995; 42: 358–360.