ⓔコラム11-4-28 乳糖不耐症1)
症状
乳糖を多く含む牛乳などの摂取後に速やかに出現する腹部膨満感,悪心,腹鳴,腹痛,下痢などがみられる.
原因・病態
小腸の絨毛にある乳糖分解酵素 (ラクターゼ) の欠乏により,乳糖をグルコース (ブドウ糖) とガラクトースに分解できないために起きる.乳糖は小腸から吸収されず浸透圧により腸管内に水を引き込み,腸管が拡張して症状を起こす.小腸で吸収されない乳糖は大腸内で腸内細菌により短鎖脂肪酸とガス (二酸化炭素,メタン,水素) に分解され,さまざまな症状を起こす.日本人はラクターゼが少ないことが知られているが,胃切除後にはさらに胃排出亢進による相対的なラクターゼ不足や胃酸分泌が低下し腸内細菌叢が変化することによるラクターゼ活性の低下も加わり,本症を発症しやすい.
術式との関連
貯留能が小さい術式 (特に胃全摘) に発症しやすい.
診断
牛乳や乳糖負荷により症状が起き,ラクターゼ製剤の投与により症状が軽減することで臨床的に診断する.小腸粘膜生検によるラクターゼ/サッカラーゼ比,迅速乳糖試験や乳糖負荷試験,乳糖呼気テストが診断に用いられることがある.
治療
牛乳や牛乳含有食品の過剰摂取を避ける.乳製品はヨーグルト,乳酸菌飲料,乳糖分解乳などを摂取する.牛乳はゆっくりとよく噛むようにして飲む.乳糖分解酵素薬 (ガラクトシダーゼ) を投与する.
〔中田浩二〕
■文献