ⓔコラム11-4-7 慢性胃炎の分類
Sydney Systemでは萎縮の進展度は取り上げられていないが,日本では,内視鏡的萎縮の進展度を木村・竹本分類を用いて評価している.さらに,2014年に,簡便かつ客観性のある内視鏡的所見をもとに,H. pylori感染状態 (未感染,現感染,既感染) を診断し,そして胃癌のリスク評価を行う「胃炎の京都分類」が作成され,2018年には改訂版もつくられ,胃炎の内視鏡所見記載方法として用いられている1).
StricklandとMackayは,慢性胃炎をA型胃炎とB型胃炎に分類した2).A型胃炎は自己免疫性胃炎であり,抗胃壁細胞抗体や抗内因子抗体が出現する.自己免疫的機序により壁細胞が破壊され,体部胃底腺領域の選択的萎縮とそれに伴う酸分泌低下,高ガストリン血症,そして内分泌細胞の過形成が生じる.壁細胞の破壊および抗内因子抗体の出現により内因子の低下が生じるとビタミンB12の吸収低下が生じる.ビタミンB12欠乏症になると,悪性貧血が生じる.B型胃炎は,前庭部優位に萎縮性変化を認め,体部萎縮は多発巣状である.抗胃壁細胞抗体や抗内因子抗体は陰性で,H. pylori感染によって生じる.
化学性胃炎はreactive gastropathyともいわれる.C型胃炎と称されたこともある.非ステロイド性抗炎症薬 (non-steroidal anti–inflammatory drugs: NSAIDs) や胆汁逆流によるものが多く,組織学的に炎症を伴わない腺窩上皮の過形成を認める3).化学性胃炎は慢性的な状態で,NSAIDsによって引き起こされる急性出血性胃炎やNSAIDs潰瘍とは区別される状態である.リンパ球性胃炎は原因不明の免疫機序で生じることもある.グルテンやH. pyloriが原因で生じることもある.好酸球性胃腸炎の病変が胃に局在する場合,好酸球性胃炎とよぶ.NHPH胃炎の原因菌の多くは豚などに感染するH. suisで,残りのほとんどはH. heilmanniiである.
〔北條麻理子・永原章仁〕
■文献
春間 賢監,加藤元嗣,井上和彦,他編:胃炎の京都分類 改訂第2版,日本メディカルセンター,2018.
Strickland RG, Mackay IR: A reappraisal of the nature and significance of chronic atrophic gastritis. Am J Dig Dis, 1973; 18: 426–440.
Genta RM: Differential diagnosis of reactive gastropathy. Semin Diagn Pathol, 2005; 22: 273–283.