ⓔコラム11-5-3 GIST

概念

 GISTとは,gastrointestinal stromal tumorの略で,消化管間質腫瘍と呼称する.胃や腸の筋層内にある「Cajal介在細胞」の前駆細胞が異常に増殖し腫瘍化した病変で粘膜下腫瘍の形態を呈する.比較的まれな疾患で,10万人に2人くらいの割合で発生し,50~60歳代に多い.発生部位は胃が60~70%と最も多く,小腸は20~30%,大腸と食道は約5%とされている.

診断

 診断には,超音波内視鏡検査 (endoscopic ultrasonography: EUS),鉗子生検で診断がつかない場合は,超音波内視鏡下穿刺吸引生検法 (endoscopic ultrasonography guided fine needle aspiration biopsy: EUS–FNAB) による組織検査を行う.

 鑑別すべき病変としては,ほかの間葉系腫瘍 (平滑筋腫や平滑筋肉腫,神経系原性腫瘍など),血管原性腫瘍 (血管腫,グロームス腫瘍,血管肉腫,Kaposi肉腫など),脂肪腫,脂肪肉腫,悪性リンパ腫,悪性黒色腫,カルチノイド・粘膜下腫瘍様形態を呈する癌腫 (リンパ球浸潤性髄様癌,未分化型または低分化腺癌,膠様腺癌,異所性胃腺から発生した癌,内分泌細胞癌,胃型形質をもつ管状腺癌など),転移性腫瘍,異所性膵,炎症性線維性ポリープ (IFP),粘膜下層の異所性腺管や囊腫など粘膜下腫瘍の形態を呈する病変すべてである.

病理診断

 通常のHE染色のみでは平滑筋腫瘍や神経鞘腫などと類似した組織像を呈し鑑別困難なことがあり,免疫染色を用いた鑑別が必要である (図1).

図1 病理診断. *1:このようなパターンを示す腫瘍にはsolitary fibrous tumorがあり,鑑別を要する. *2:このようなケースの診断にはc–kitやPDGFRA遺伝子の突然変異検索が有用となる.

リスク分類

 転移を示したGISTは悪性と断定できるが,腫瘍径の小さい,もしくは核分裂像が目立たないGISTでも転移を示すことがあり,腫瘍径が小さいから,または増殖能が目立たないから良性であると断定することは困難である.転移のみられないGIST の場合には,良性または悪性と診断するのではなく,腫瘍径や細胞増殖能などの指標を組み合わせたリスク分類が行われる (表1表2表3).

表1 GISTのリスク分類①(いわゆるFletcher分類,NIHコンセンサス分類) (Fletcher CD, et al: Hum Pathol, 2002; 33: 459–465).
表2 GISTのリスク分類②(Miettinen M, et al: Semin Diag Pathol, 2006; 23: 70–83).
表3 modified Fletcher分類 (いわゆるJoensuu分類) (Joensuu H: Hum Pathol, 2008; 39; 1411,Rutkowski P, et al: Eur J Surg Oncol, 2011; 37; 890).

治療

 組織診断がついており切除可能な原発GISTに対する治療の第一選択は外科治療である.再発GISTの治療の原則はイマチニブ投与である.

〔田中信治〕

■文献

  1. 日本癌治療学会,日本胃癌学会,他編:GIST診療ガイドライン 第3版,金原出版,2014.