ⓔコラム12-1-3 三次元CT画像
CTの主たる役割は形態学的診断であるが,からだの長軸方向に複数のX線検出器を有する多列検出器CT (multi–detector CT: MDCT) が1998年に臨床使用されるようになった.MDCTの普及により薄いスライス厚 (高空間分解能) の断層画像を短時間 (高時間分解能) で撮影することが可能となり,現在では1 mm以下の薄いスライス厚で全肝を数秒間で撮像できる64列以上の検出器を有するMDCTが多くの施設で設置されている.からだの長軸方向の空間分解能 (スライス厚) と横断面の空間分解能を同程度 (1 mm未満) に設定した等方向性画像 (isotropic voxel volume imaging) で全肝を撮像することで,高精細のボリュームデータを得ることができ,このデータを基にして高画質の冠状断像 (coronal image) や矢状断像 (sagittal image),斜断面像 (oblique image) など任意の再構成断面である多断面再構成画像 (multiplaner reconstruction: MPR) を作成することが可能である (ⓔ図12-1-3).また画像処理用ワークステーションを利用することで,各画像上で得られた最大濃度を投影面に表示する最大値投影法 (maximum intensity projection: MIP) や逆に最低濃度を表示する最小値投影法 (minimum intensity projection: MinIP) を作成できる.さらに撮像対象物の表面に陰影をつけて立体感の高い画像を表示するボリュームレンダリング法 (volume rendering: VR) を作成可能である.これらの画像データを利用して得られた肝動脈や門脈,肝静脈の三次元画像 (CT angiography) や肝実質の体積測定 (CT volumetry) を利用することで,詳細な解剖構造の把握や病変と周囲組織との位置関係を立体的に評価することが可能となる (ⓔ動画12-1-1,ⓔ動画12-1-2).これらの画像は外科手術前のナビゲーションやラジオ波焼灼 (しょうしゃく) 術および肝動脈化学塞栓療法の治療範囲の確認に有用である.
〔祖父江慶太郎・村上卓道〕