ⓔコラム12-5-2 脂肪酸合成
肝細胞での脂肪酸のde novo合成は空腹時には抑制され,食事摂取で上昇するが,NAFLD患者では空腹時のde novo合成が抑制されず,脂肪肝形成に重要な役割を果たしている.糖質,蛋白質,脂質はいずれもアセチル–CoAに変換されて脂肪酸合成の基質になるが,このアセチル–CoAからの脂肪酸合成にはacetyl–CoA carboxylase (ACC),fatty acid synthase (FAS) などの酵素反応が関与し (図1),その制御因子として,sterol regulatory element–binding protein (SREBP)–1c,liver X–activated receptor (LXR),carbohydrate response element binding protein (ChREBP) などの転写因子群が知られている.中性脂肪合成の最終段階にかかわるdiacylglycerol acyltransferase (DGAT) 2を阻害すると肝細胞への脂肪蓄積は軽減するが肝細胞障害はむしろ増悪することが示されており1),過栄養条件下での肝細胞における中性脂肪合成は細胞保護作用の一環としてとらえることもできる.
〔池嶋健一〕
■文献