ⓔコラム12-7-1 急性肝炎様発症の病態

 AIHでは,急性肝炎ないしは重症肝炎,急性肝不全 (劇症肝炎,遅発性肝不全) として発症する症例 (急性肝炎様発症) がある.黄疸や血清トランスアミナーゼ高値を示し,自己抗体 (抗核抗体・抗平滑筋抗体) が陽性,血清IgGが高値であることが多いが,非定型例も存在する.急性肝炎様発症では以下の2つの病態が存在する.

①病理組織学的に門脈域の線維化と高度な細胞浸潤があり,慢性肝疾患の経過中に急性増悪として発症したと思われる症例 (急性増悪期).

②慢性肝疾患の病理組織所見がないか軽微で急性肝炎の病理所見が主体の症例で,血清IgGが高値を示さないあるいは自己抗体が陰性・低力価のこともある.組織学的に慢性肝炎への移行期の所見を呈することもある (急性肝炎期).

 いずれも通常はステロイド治療が奏効する.しかし,急性肝炎期の症例では診断困難で,治療開始が遅れることがある.急性肝不全 (劇症肝炎,遅発性肝不全) に移行するとステロイド治療抵抗性となり,きわめて予後不良である.肝移植を視野に入れた治療方針の決定が必要となる1)

〔大平弘正〕

■文献

  1. 厚生労働省難治性疾患政策研究事業「難治性の肝・胆道疾患に関する調査研究」班:自己免疫性肝炎 (AIH) 診療ガイドライン (2016年),2017.