ⓔコラム14-1-9 前立腺肥大症の治療

保存的治療

 生活指導,経過観察,健康食品などがある.過剰な水分摂取,カフェインやアルコール摂取,刺激性食品摂取などの抑制や便秘の調整,長時間の座位や下半身の冷えを避けることなどが注意点である.健康食品としてサプリメントやノコギリヤシなどで効果が示唆されているが科学的根拠はない.

薬物治療

 前立腺肥大症による下部尿路通過障害は,前立腺平滑筋への交感神経の緊張亢進により前立腺平滑筋が収縮し尿道圧迫を生ずる機序と,物理的に前立腺尿道を圧迫する機序が考えられる.前者には前立腺平滑筋弛緩作用のある薬剤,後者には男性ホルモン作用の抑制薬が効果的である.

手術治療

ⅰ) 経尿道的前立腺切除術 (transurethral resection of prostate: TUR–P): 内視鏡先端に装着した切除ループを電気メスとして前立腺組織を,かんなで削るように切除する.

ⅱ) ホルミウムレーザー前立腺核出術 (holmiumu laser enucleation of prostate: HoLEP): 内視鏡からレーザーで前立腺内腺と外腺の間を剝離し,内腺を塊状にくり抜く.

ⅲ) 光選択的レーザー前立腺蒸散術 (photoselective vaporization of the prostate by KTP laser: PVP): 内視鏡下で高出力のレーザーを照射し,前立腺内腺を蒸散させる.

ⅳ) 接触式前立腺レーザー治療 (contact laser vaporization of the prostate: CVP): 前立腺肥大組織に高熱を与え,組織中の水分や血液を一瞬で沸点に到達させて蒸発させ,組織を気化して消失させる.

ⅴ) 経尿道的マイクロ波高温度治療術 (transurethral microwave thermotherapy: TUMT): 尿道に挿入したカテーテルからマイクロ波を発射し,前立腺組織を熱によって壊死させ,前立腺内腺を縮小させる.

ⅵ) 尿道ステント (urethral stent): 内視鏡操作に尿道に筒状のステントを留置する.手術が困難な場合に行われる.

〔佐藤 滋〕