ⓔコラム14-6-7 aHUSの病態生理
aHUSは,補体第2経路の制御異常を背景とした,補体の持続的活性化による血管内皮細胞障害に起因する.自然免疫の生体防御因子である補体は,細胞膜に穴を開け病原体や感染細胞の破壊,オプソニン効果により細菌や免疫複合体の処理の促進,貪食細胞の遊走と活性化,獲得免疫の修飾自己抗体の除去,免疫細胞の分化などの多様な機能をもつ.なかでも膜侵襲複合体 (membrane attack complex; MAC: C5b6789=C5b–9) による細胞膜貫通性のチャネル形成と浸透圧性の細胞内への液体流入による細胞破壊作用は最も重要である.一方,補体は自然免疫に重要な因子であり,獲得免疫と異なり自己と他者の区別ができない.そのため,生体は補体の障害から自らを防御する仕組みをもっている.血漿中には複数の補体制御蛋白 (H因子,I因子,トロンボモジュリン,membrane co–factor protein (MCP: CD46) など) が存在し,過剰な補体の活性化や自己の細胞障害を防いでいる.aHUS患者は,H因子,I因子,MCP,トロンボモジュリンなどの先天性の遺伝子変異による機能低下,H因子に対する自己抗体,C3,B因子などの補体因子の機能獲得変異による機能亢進などを背景に,感染症,外傷,手術,出産などを契機に補体第2経路が制御不能な状態にまで活性化され,その結果内皮細胞傷害が惹起されTMAを発症する.
〔伊藤秀一〕