ⓔコラム15-4-4 結節性甲状腺腫の種類
主な甲状腺腫瘍の組織型をⓔ表15-4-3に示す.
乳頭癌特殊型として,濾胞状構造のみからなる濾胞型のほか,びまん性硬化型,高細胞型,充実型,篩型などがある.びまん性硬化型は若年女性に多く,拡張したリンパ管内に腫瘍塞栓が広範に認められ,多数の砂粒体を認める.高細胞型は腫瘍細胞の高さが幅の3倍以上を示す腫瘍細胞からなる.高齢者に発生し,甲状腺外浸潤や血管浸潤を伴うことが多く,予後不良である.篩型には家族性例があり,APC遺伝子異常による家族性大腸ポリポーシスの部分症として多発性に発生する.腔内にコロイドを欠いた篩状構造や桑実状細胞巣 (モルラ) が特徴的で,腫瘍細胞核はβ–カテニン陽性である.乳頭癌に低分化成分の混在を認めることがあるが,それが優位な場合 (50%以上) は低分化癌に分類する.低分化成分から成る甲状腺腫瘍に乳頭癌に典型的な核所見がみられる場合,充実型乳頭癌に分類する.なお,一部にでも未分化癌成分が確認される場合は未分化癌に分類する.
甲状腺内胸腺癌は胸腺上皮腫瘍に類似した悪性腫瘍で,多くは甲状腺葉下部に発生する.CD5が腫瘍細胞に陽性となる.
扁平上皮癌は腫瘍全体が扁平上皮への分化を示すもので,未分化癌に近い臨床経過をたどる.
転移性腫瘍では,腎癌由来のものが多い.ほかに肺癌,乳癌,消化器癌からの転移もある.各種免疫組織染色が鑑別診断に有用である.
〔杉谷 巌〕