ⓔコラム16-2-1 神経系を介したインスリン分泌第1相の制御
インスリン分泌第1相の生理作用
長期絶食後の再摂食時には,脳へのブドウ糖 (グルコース) 供給を優先できるよう,膵β細胞からのインスリン分泌第1相が減弱する (図1).この第1相低下は絶食中に活性化した視床下部AMPキナーゼによる交感神経の活性化が関与しており,インスリン分泌が低下した結果,末梢のインスリン感受性臓器へのブドウ糖取り込みが抑制され,血糖低下が抑制され,脳へのブドウ糖供給が増加する (図2).一方,頻回摂食時にはインスリン分泌第1相は増大し,摂取したブドウ糖の多くが末梢のインスリン感受性臓器に取り込まれ,エネルギー蓄積が起こる.このように哺乳類は,絶食時間の長さに応じて,摂取したブドウ糖を必要な臓器へ適宜供給する機能を兼ね備えている.
糖尿病初期のインスリン分泌第1相の減弱のメカニズム
糖尿病発症初期にはインスリン分泌第1相が減弱し,これが耐糖能異常の原因の1つとなる.この糖尿病における第1相の低下が,長期絶食時と同様のメカニズムで生じていることが明らかとされている (図3).
〔前川 聡〕