ⓔコラム17-10-20 表面抗原と遺伝子
フローサイトメトリー法によって検出される表面抗原は,正常形質細胞ではCD19+,CD56-,CD38+,CD138+であるのに対し,多くの骨髄腫細胞ではCD19-で,2/3の症例でCD56+,約20%の症例でCD20+である.通常の染色体検査では,分裂像が得られることはまれである.FISH (fluorescence in situ hybridization) 法による染色体検査では,14q32上の免疫グロブリン重鎖 (IgH) 遺伝子との相互転座が約半数の症例に認められ,相手遺伝子としては11q13 (CCND1),4p16.3 (FGFR3/MMSET),16q23 (c–MAF ),20q11 (MAFB) などがある.この相互転座によりIgHの強力なエンハンサーがCCND1やFGFR3/MMSET,c–MAFなどの癌原遺伝子に近づき,そのためこれらの遺伝子発現が亢進することが,多発性骨髄腫発症に寄与していると考えられている.t (4;14),t (14;16),t (14;20) 陽性例や,染色体17p欠失,染色体1q23増幅例は,一般に予後不良である.近年の次世代シーケンサーによる網羅的遺伝子解析により,N–RASやK–RASをはじめとするさまざまな遺伝子の変異も発見され,これらの遺伝子変異も発症や予後に影響している.
〔半田 寛〕