ⓔコラム18-11-4 森永ヒ素ミルク中毒

 1955年6月頃から,おもに西日本を中心にヒ素の混入した森永乳業製の粉ミルクを飲用した乳幼児に多数のヒ素中毒,死亡者を出した食中毒事件である.これは1953年頃から,全国の工場で酸化の進んだ乳製品の凝固を防ぎ,溶解度を高めるための安定剤として第二リン酸ソーダを粉ミルクに添加した際に,一部の工場で純度が低く,多量のヒ素が混入していた工業用の製品が使われために生じた食中毒で,これを飲んだ約1万3000人の乳児がヒ素中毒になり,130人以上もの死者が出た.慢性期の症状で長期間苦しんでいる被害者も多くおり,日本における食の安全基準を確立するためのきっかけになった事件といえる.

〔古谷博和〕