ⓔコラム18-15-1 頭部外傷後の長期にわたる諸問題
1) 外傷性痙攣発作と外傷性てんかん: 受傷後7日以内の早期発作にはフェニトイン(ホスフェニトイン),レベチラセタムの経静脈投与が勧められる.受傷後1週間以上経て生じる外傷性てんかんに対しては抗てんかん薬の予防的投与は行わない.受傷後2年以上経て発症する外傷性てんかんの比率はきわめて低いので,これについての追跡は2年間でほぼ十分といえよう.
2) 慢性外傷性脳症(chronic traumatic encephalopathy: CTE): 長期予後の追跡により,知的・情動面での障害が残る例があることが指摘され,「脳損傷による高次脳機能障害」としてボクシング,アメリカンフットボール,レスリングなどのスポーツとのかかわりがあるとされているが,交通事故などによる賠償の問題としても注目されつつある.典型的には認知障害と性格・人格変化とが家庭ないし社会復帰にあたり問題となり,うつ病,自殺企図,薬物・アルコール依存などに対し心理学的支援の重要性が強調されている.
〔三宅康史〕