ⓔコラム18-4-4 神経筋接合部における情報伝達の生理学

 シナプス前終末にはシナプス小胞とよばれる超微小体が多数あり,その各々が5千~1万個のアセチルコリン (ACh) 分子を含んでいる.安静状態では小胞がランダムに接合部間隙に放出され,これが筋終板に達すると,シナプス後膜にわずかな脱分極が起こる.この単位脱分極は微小終板電位 (miniature end–plate potential: MEPP) とよばれ,閾値に達しないため筋活動電位の発生には結びつかない.これに対して運動神経の興奮が神経終末に達すると,シナプス前膜の電位依存性のカルシウムイオン (Ca2+) チャネルが開き,Ca2+が軸索細胞質内に流入する.このCa2+流入の結果多数の小胞が接合部間隙に放出され,これらの小胞に含まれるAChがシナプス後膜のACh受容体に一挙に到達する.筋終板に達したAchは2個ずつ細胞膜のACh受容体に付着し,その分子構造の変化でNaおよびKの透過性を非特異的に増大する.これに伴う脱分極は終板電位 (end–plate potential: EPP) とよばれるが,この電位が筋膜の閾値に達するとACh受容体周囲のNaチャネルが開き,筋膜に活動電位が発生する (ⓔ図18-4-13).

〔幸原伸夫〕