ⓔコラム18-6-1 α―シヌクレインとアミロイド蛋白

 アミロイドは,HE染色でみるとエオシンで淡いピンク色に染まる無構造の細胞外沈着物であるが,Congo Red染色で赤橙色に染まり偏光顕微鏡観察で緑色偏光を呈し,電子顕微鏡では8~15 nmの線維構造を呈する物質として病理学的に定義され,細胞内にみられるアミロイド類似の線維性構造物 (神経原線維変化,Lewy小体など) は,細胞外沈着物質であるアミロイドとは定義上は区別されていた.事実,Lewy小体はCongo Red染色陰性である.一方,アミロイド蛋白の生物物理学定義として,アミロイド線維は電子顕微鏡下で幅7~13 nmのゆるやかな螺旋構造をもった針状細線維とされている.X線結晶解析 (X線回折,X ray diffraction) を行うと,線維軸方向に約4.8Å周期の,また線維軸に垂直方向に約10Å周期の繰り返し構造が観察される.

 これは,線維軸に垂直方向にβ–ストランドが規則的に配列したひだ状のβ–シート構造を表しており,このような構造が何層かに積み重なることにより1本の線維が形成されると考えられ,cross–β conformationといわれる.α–シヌクレインは,細胞内蛋白ではあるが,in vitroでは,アミロイド蛋白であることが知られていた1).最近剖検脳においても,Lewy小体の一部がアミロイド蛋白であることが証明された2)

〔望月秀樹〕

■文献

  1. Serpell LC, Berriman J, et al: Fiber diffraction of synthetic alpha–synuclein filaments shows amyloid–like cross–beta conformation. Proc Natl Acad Sci USA, 2000; 97: 4897–4902.

  2. Araki K, Yagi N, et al: Parkinson’s disease is a type of amyloidosis featuring accumulation of amyloid fibrils of α–synuclein.Proc Natl Acad Sci USA, 2019; 116: 17963–17969.