ⓔコラム2-1-3 DCSの分類とDCIの各症状
DCSの分類は,1960年に四肢や関節の痛みを呈する軽症あるいは単純型とするⅠ型と,Ⅰ型以外の症状でそれよりも重症あるいは複雑型としてのⅡ型に分けられたのがはじまりである.再圧治療の成績とある程度相関し,型分類が治療表に直結することから,古典的な分類ではあるが若干の修正が加えられて米海軍ダイビングマニュアルなどでは現在でも使われている.しかし,指先のピリピリ感などを含めて神経症状を有するものはすべてⅡ型となってしまい,重症と判断する幅が広すぎるものとなっている.そのため現実的な対応や治療に反映できる分類が求められており,緊急度に反映し,かつ予後の予測が可能な重症度分類を確立することが課題となっている.
なお,DCSとAGEの合併と考えられる病態をⅢ型DCSと呼称することもあるが,広くコンセンサスは得られていない.
DCIの症状別発生頻度については,四肢の痛みが最も多いといわれる職業潜水士と違って,レジャーダイバーに関しては神経症状が最も多く,その90%は四肢の症状であり,上肢は下肢の2倍の頻度でみられ,重篤な神経障害を示すのは少数であり,多くは軽度である.
脊髄神経症状に先行して皮膚症状 (大理石斑,cutis marmorata) (ⓔコラム2-1-5) がみられる場合や,腰部の帯状痛 (girdle pain) 出現後に排尿障害へ進行する場合があるため,経過をみることが大事である.初発症状が痛みのみでも,引き続いて神経症状が出るパターンがよくみられる.自律神経を含めすべての神経・感覚器が障害される可能性をもち,神経障害に特徴的なパターンはないため,注意深い観察や診察が必要である.潜水後の異常な倦怠感や疲労感,腹痛や下痢,あるいは集中力低下や性格の変化もDCIの症状として出てくることがある.
内耳に発症するDCSは,回転性めまい,悪心,嘔吐,眼震,聴力低下,耳鳴といった症状を呈するが,早期の積極的な酸素再圧治療が必要とされている.ヘリウム酸素混合ガスを用いた深深度潜水では内耳のDCSが起きやすいが,レジャーダイバーでもみられることがある.
〔鈴木信哉〕