ⓔコラム2-1-6 超急性期医療体制への4つの施策
①DMAT:DMATは災害急性期の医療を担う災害派遣医療チームとして,平成17年に発足した.1チームの基本構成は,医師,看護師,事務員から成る計4~5人である.令和3年3月末現在で,828施設,1747チーム,15645人体制に整備されている.DMATの出動は,被災都道府県から非被災都道府県への要請によって行われる.DMATの活動には,本部活動,災害現場での活動,病院支援,地域医療搬送,広域医療搬送などがある.
②災害拠点病院:被災地の医療の確保,被災地への医療支援などを目的として,1996年に厚生労働省により,原則各都道府県に1カ所の基幹災害医療センターと二次医療圏に1カ所の地域災害医療センターの整備が開始された.災害拠点病院は,十分な医療設備や医療体制,情報収集システム,ヘリポート,緊急車両,自己完結型の医療救護チームを派遣できる資機材を備えており,災害時に中心的役割を果たすことが期待されている.2020年現在,基幹災害医療センター63カ所,地域災害医療センター692カ所が整備されている.災害拠点病院の指定は,都道府県知事によって行われる.
③広域医療搬送計画:広域医療搬送の目的は,重症者を被災地外へ搬送することにより,高度医療を提供することと,被災地医療施設の負担を軽減することである.広域医療搬送は,被災県が内閣府に対して要請することにより始まる.被災地外からDMATを乗せた自衛隊機が被災地内の航空搬送拠点に飛来し,航空搬送拠点臨時医療施設 (staging care unit: SCU) を設置する.被災地内から広域医療搬送の適応患者をSCUに集め,そこから非被災地の空港へ搬送する計画である (図1).
④広域災害救急医療情報システム (EMIS):災害時に病院の情報を共有するためにできた情報ネットワークシステムである (図2).発災時,被災地内の病院は,被災状況を入力する.項目は病院建物の被災,ライフラインの被災,傷病者の受け入れ情報などである.入力されたデータはインターネットを介し,内閣府,厚生労働省,災害拠点病院などで共有する.この情報を基に,病院の被災状況および傷病者動態を判断し,DMATなどの医療支援が行われる.現在,すべての病院がEMISに加入している.
〔小井土雄一〕