ⓔコラム5-41-1 脱水の治療
治療目標は,循環血液量を正常な状態に回復させ,進行する体液量減少を補填することである.軽度の循環血液量減少では,経口での水分補給と正常の食事摂取を励行することで治療可能だが,重症例では水・ナトリウムの静脈内投与が必要となる.輸液の種類は原因の病態生理に基づいて選択する.重度の循環血液量減少を呈する血清ナトリウム濃度が正常か,または低ナトリウム血症の患者においては,等張の生理食塩液 (0.9%NaCl,154 mEq/L Na+) が最も適している.アルブミン溶液などの膠質液は,この目的において生理食塩液よりも明らかにすぐれているとはいえない.高ナトリウム血症の患者においては低張性輸液を選択し,尿崩症のように自由水主体の喪失の場合は5%グルコース溶液を,Na+とCl-を水分とともに喪失している場合は低張食塩液 (生理食塩液の1/2か1/4の濃度) を使用する.重度の出血か貧血の患者では,ヘマトクリットが35%をこえない程度まで赤血球輸血を施行する.
〔頼 建光〕
■文献