ⓔコラム5-42-2 尿流動態検査
下部尿路機能を評価する方法で,残尿測定,尿流測定,尿道内圧測定,膀胱内圧測定,内圧尿流検査,などがある.
残尿測定
残尿とは排尿直後に膀胱内に残存する尿のことをいう.測定法としてはカテーテルによる導尿での測定が正確であるが,侵襲的である.一方超音波検査による測定法は低侵襲であるが,ある程度の誤差がある.
尿流検査
尿流検査は低侵襲であり,排尿障害を有する患者において排尿状態の客観的・定量的な評価に有用な検査である.前立腺肥大症などの排尿障害では尿流量 (単位時間当たりの尿量) の低下,排尿時間の延長や断続的尿流 (尿流が中断し再開する) などがみられる.
膀胱内圧測定と内圧尿流検査 (pressure flow study: PFS)
尿道カテーテルを挿入するため専門的検査で,やや侵襲的であるが,蓄尿時の膀胱機能評価における排尿筋過活動,膀胱コンプライアンス,膀胱容量などを評価し,排尿時における下部尿路閉塞を診断する.同時に外尿道括約筋筋電図 (針または表面電極による方法がある) を測定する.
蓄尿中の膀胱内圧は低圧のまま維持される.外尿道括約筋は,蓄尿時は常に活動しており,初発尿意あたりから活動が増強し,最大尿意時でピークとなる.
排尿を意図すると,外尿道括約筋の持続的な活動が完全に停止する.排尿時は,この尿道括約筋の弛緩に続いて膀胱が収縮して,尿が排出される (排尿期).これらを膀胱と尿道の協調作用という (図1).
蓄尿機能障害の原因は,排尿筋過活動または低コンプライアンス膀胱,あるいは不全尿道 (括約筋の収縮不全) である.排尿障害の原因は排尿筋低活動または無収縮,あるいは下部尿路閉塞である.
排尿筋過活動は蓄尿時に排尿筋不随意収縮がみられるもので,その原因には神経因性 (脳疾患や腰髄以上の脊髄疾患など) によるものと非神経因性 (加齢,特発性など) のものがある (図2).低コンプライアンス膀胱は膀胱の伸展性が低下した (蓄尿時に膀胱の低圧が保てない) 状態で,蓄尿時に膀胱内圧が徐々に上昇するものである (図3).
内圧尿流検査により排尿筋収縮力と下部尿路閉塞の程度を同時に評価できる.排尿期における膀胱機能の異常には,排尿筋低活動と排尿筋無収縮があり,尿道機能の異常には膀胱出口部閉塞 (下部尿路閉塞) がある.排尿筋低活動は排尿時に排尿筋の収縮が低下しているもので,排尿筋無収縮はまったく収縮しないものである.膀胱出口部閉塞には前立腺肥大症や骨盤臓器脱 (膀胱瘤など) により,解剖的に膀胱の出口が閉塞する場合と,排尿 (排尿筋収縮) 時に機能的に尿道が弛緩しない場合がある.
〔山西友典〕