ⓔコラム6-1-1 各種抗菌薬の作用機序
細胞壁合成阻害
細胞壁はおもにペプチドグリカンで構成され,哺乳類の細胞には存在しない.細胞壁合成阻害薬は,ペプチドグリカン合成における架橋反応を阻害し細胞融解を引き起こすことによって,通常は殺菌的に作用する.β–ラクタム系薬 (ペニシリン系,セファロスポリン系,カルバペネム系,モノバクタム系) とグリコペプチド系薬 (バンコマイシン,テイコプラニン) が代表的である.
蛋白合成阻害
蛋白合成阻害薬は細菌がもつ70Sリボソームに作用し,選択的な抗菌効果を示す.リボソーム30Sサブユニットを阻害するアミノグリコシド系薬およびテトラサイクリン系薬と,50Sサブユニットを阻害するマクロライド系薬,クリンダマイシン,オキサゾリジノン系薬 (リネゾリド,テジゾリド),クロラムフェニコールなどが代表的である.アミノグリコシド系薬を除き,大部分は静菌的に作用する.
核酸合成阻害
キノロン系薬はDNAジャイレースやDNAトポイソメラーゼに作用し,細菌のDNA合成を阻害する.リファマイシン系薬 (リファンピシン) は細菌のRNAポリメラーゼに結合し,mRNAの伸長を阻害する.メトロニダゾールは,偏性嫌気性菌や一部の原虫の電子伝達系によってニトロ基が還元され,その化合物がDNAを障害することにより殺菌的に作用する.
細胞膜機能阻害
リポペプチド系薬 (ダプトマイシン) やポリペプチド系薬 (コリスチン,ポリミキシンBなど) は,細菌の細胞膜に直接作用し,細胞膜の透過性を変化させることにより殺菌的に作用する.
葉酸合成阻害
哺乳類と異なり,多くの細菌は葉酸の合成能をもつ.スルホンアミド系薬 (スルファメトキサゾールなど) はジヒドロプテロイン酸シンターゼを,トリメトプリムはジヒドロ葉酸レダクターゼをそれぞれ阻害することにより葉酸合成を障害する.
〔畠山修司〕