ⓔコラム7-1-2 針刺し・切創防止対策

 血液で汚染された鋭利器材による針刺し切創は,血液媒介病原体 (後述) による医療者への感染の最大のリスク要因となる.このため,近年針刺しを防ぐための機能が付いた器材 (安全器材) が開発され,医療現場で広く使用されている.また,使用後の針のリキャップは,針刺しの危険が高いため,行ってはならない.

 血液媒介病原体は,針刺し切創や傷のある皮膚や粘膜へ血液や体液が接触することにより,ヒトの体内に侵入して感染症を引き起こす可能性のある微生物.特にB型肝炎ウイルス,C型肝炎ウイルス,ヒト免疫不全ウイルス (human immunodeficiency virus: HIV) は,医療現場での対策が必要とされる.B型肝炎ウイルスについては,すべての医療者に対してワクチンによる免疫の獲得が望ましい.このほかに,成人T細胞白血病,Creutzfeldt–Jakob病の原因となるプリオンや,マラリア,回帰熱ボレリア,ブルセラ,レプトスピラ,アルボウイルスなども,血液曝露による感染リスクがある.

〔飯沼由嗣〕