ⓔコラム8-7-6 P2Y12受容体拮抗薬

 血小板のADP受容体であるP2Y12受容体を阻害する薬剤である.現在日本では,クロピドグレル,プラスグレル,チカグレロールの3剤が保険承認されている.

 心筋梗塞の再発予防やステント血栓症の予防に有効である.歴史的にはアスピリンとP2Y12受容体拮抗薬の2剤併用 (dual antiplatelet therapy: DAPT) で,ステント血栓症が激減したことから,PCIの併用療法としてDAPTは標準治療薬となっている.

 さらに,急性冠症候群 (ACS) の二次予防,脳卒中急性期などさまざまな場面で広く使用される一方で,DAPTでは出血合併症が増加するため,適切な時期での減量が推奨されている.現在では待機的経皮的冠動脈インターベンション (PCI) で出血合併症が多い症例には1カ月から3カ月で単剤とし,その単剤としてはアスピリンとP2Y12受容体拮抗薬のいずれも可能であるが,P2Y12受容体拮抗薬の方で上部消化管出血が少なく好まれるようである.

 ACS後には海外のガイドラインではDAPT 12か月が推奨されているが,日本ではより短縮の傾向にあるようである.

〔伊苅裕二〕