ⓔコラム8-7-9 PCSK9阻害薬

 家族性高コレステロール血症 (FH),高コレステロール血症,ただし,心血管イベントの発現リスクが高く,スタチンで効果不十分な場合に限る患者に対して現在,PCSK9(proprotein convertase subtilisin/kexin type 9,プロ蛋白転換酵素サブチリシン/ケキシン9型) 阻害薬であるエボロクマブ,アリロクマブが使用可能となっている.PCSK9阻害薬は,肝臓LDL受容体の分解にかかわるPCSK9蛋白に完全ヒト型抗体が特異的に結合し,その作用を阻害することで,LDL受容体のリサイクリングを増加させ,強力なLDLコレステロール低下作用を示す薬剤である.スタチンを内服しているにもかかわらず,LDLコレステロール70 mg/dL以上の動脈硬化性心血管疾患患者27564例において,エボロクマブの追加投与が心血管イベントに影響するか否かを検討したFOURIER (Further Cardiovascular Outcomes Research with PCSK9 Inhibition in Subjects with Elevated Risk) 試験1)の結果では,48週時点でエボロクマブ群のLDLコレステロールは92 mg/dLから30 mg/dLまで低下が認められた.その結果,試験期間の中央値2.2年で,エボロクマブ群は対照群に比べて,心血管イベント発症率を15%有意に減少させ,スタチンにエボロクマブを加えることによりLDLコレステロールを30 mg/dL程度まで低下させることの有効性が示されるとともに,本試験においても”the lower,the better”があらためて示される結果となった.

〔河上 良・南野哲男〕

■文献

  1. Sabatine MS, Giugliano RP, et al: Evolocumab and Clinical Outcomes in Patients with Cardiovascular Disease. N Engl J Med, 2017; 376: 1713–1722.