ⓔコラム9-1-1 コロトコフ音の機序

 聴診法による収縮期血圧・拡張期血圧は,直接法による動脈圧測定における最高血圧・最低血圧値と高い相関を有することが多くの実験的研究から報告されている.また,オシロメトリック法の登場以前に実施された多くの臨床研究,疫学研究は,原則としてこの聴診法によって得られた診察室血圧によるものである.

 しかしながら聴診法の基本であるコロトコフ音は,血管内の乱流音と衝撃波を主成分として発生するものの,ほかにもさまざまな要因が関与しており,その機序には不明確な点も多い1,2).動脈硬化の進んだ血管で起きる聴診間隙 (コロトコフ第Ⅰ~Ⅴ相の間で,カフ圧減圧時にコロトコフ音がいったん消えた後に再び聞こえはじめる間隙) の発生機序も同様に明確にされていない.

〔大久保孝義〕

■文献

  1. 清水優史, 龍前三郎: 何が真のコロトコフ音発生機構か. 医用電子と生体工学, 1993; 31: 53–60.

  2. 森反俊幸, 嶋津秀昭, 他: コロトコフ音発生機序の検討. 日本バイオレオロジー学会誌 (B&R), 1995; 9: 146–153.